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あとがき
玉木 毅
pp.446
発行日 2025年5月1日
Published Date 2025/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790060446
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誰もが「日本人は水と安全はタダだと思っている」というフレーズを見聞きしたことがあるのではないだろうか.ただ実際水資源について言えば,日本の降水量は多いものの,急峻な地形のためすぐに流出してしまい,人口も多いため一人当たりの水資源量は世界平均より少ないといわれている.もう一つ日本の水の豊かさの例えとして,水道の水をそのまま飲める国は世界で12か国のみで,日本はその数少ない国の1つということもよくいわれるが,これとて関係施設・関係者の弛まぬ努力によるもので,決して「タダ」ではない.さらに近い将来水道管の老朽化等により,全国各地の水道事業は継続が困難となり,大幅な料金の値上げを余儀なくされることを予想する向きもある.
さて,もう一つの「安全」である.こちらの充実度は最近,水以上に風前の灯かもしれない.特殊詐欺の被害は増える一方で,闇バイトによる大胆かつ残忍な強盗事件の記憶も新しい.増え続ける防犯カメラ,セコムやアルソックなどの警備会社のステッカーも,街の風景の一部として見慣れたものになっており,つまり安全も決して「タダ」ではない.

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