Current Article
先天性外耳道閉鎖症の基礎と臨床
西﨑 和則
1
,
増田 游
1
,
武田 靖志
1
1岡山大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.561-569
発行日 2000年8月20日
Published Date 2000/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902223
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
中耳・外耳の伝音系の聴器奇形は,その複雑な発生過程から多彩な表現型を示す。聴器奇形の発生機序の解明および奇形病態の観察のため,従来より催奇形物質による動物実験が行われてきた1,2)。ビタミンA誘導体,特に最近ではレチノインク酸を母獣に投与して,その胎仔に耳介奇形や外耳道閉鎖症などの外表奇形を生じさせた報告が多い3)。近年,プログラム細胞死が器官形成において重要な役割を果たしていることが理解され,口蓋形成期におけるプログラム細胞死の障害で口蓋裂が起こる可能性が指摘されている4)。われわれも聴器の発生におけるプログラム細胞死を観察してきた5,6)。この中で,特に外耳道の器官形成にプログラム細胞死がどのように関与しているかを明らかにした7)。また,分子生物学的手法を用いて聴器奇形の責任遺伝子の解析が広く行われているが,本稿では,この分野での最新の知見を紹介する。
先天性外耳道閉鎖症を中心とした聴器奇形に対する聴力改善術は,奇形耳の複雑な病態のため耳科手術の中でも最も困難な手術の1つで,術後の合併症も解決されていない問題を含んでいる8,9)。外耳道閉鎖症の診断と治療の問題点にも言及し,また当科における治療成績10)とナビゲーションシステムの有用性11)についても言及する。
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.