目でみる耳鼻咽喉科
咳嗽を主訴とした巨大な振子様扁桃の1小児例
小林 由実
1
,
工藤 典代
1
,
沼田 勉
2
1千葉県こども病院耳鼻咽喉科
2千葉大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.558-559
発行日 2000年8月20日
Published Date 2000/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902222
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振子様扁桃は,扁桃がその茎により咽頭腔に懸垂するものと定義されている。狭義には扁桃と同一組織のものをいい,広義には単に形態的に扁桃より有茎性に発生したものをいう。今回,巨大な振子様扁桃の1小児例を経験したので報告する。
症例は13歳,女子。主訴は1週間前からの乾性の咳嗽と咽頭異物感で,固形物摂取困難,夜間の呼吸困難もあった。近医小児科を受診し,咽頭腫瘍の疑いで当科に依頼された。既往歴としては幼小児期から含み声,習慣性扁桃炎があり,扁桃肥大の指摘もあった。全身所見に異常はなかった。局所所見は上咽頭と中咽頭を閉塞するようにクルミ大の腫瘤が認められた。単純X線を図1に,CTを図2に示した。嚥下運動による可動性がわずかにみられ,茎により左口蓋扁桃上極の後面に付着していた。振子様扁桃の診断のもとに口蓋扁桃摘出術を施行した(図3)。振子様扁桃の表面にはところどころに陰窩がみられ,凹凸が激しく不整で,赤く血管に富んでいた(図4)。組織は口蓋扁桃と同一だが,リンパ組織周囲の間質の高度の線維化を伴っており,慢性的な炎症が疑われた(図5)。
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