Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
ペリフェリン/RDS遺伝子異常と臨床型の異質性
今回までの5回で,筆者らが検索し得た網膜変性の原因遺伝子ペリフェリン/RDSの遺伝子異常と各症例の臨床像を,可能な限り詳細に記載してきた。今まで多くの遺伝性疾患は「one gene→onedisease」と考えられてきたが,すでに読者がお気付きのように,この視細胞特異糖蛋白であるペリフェリン/RDSには,それが当てはまらない。すなわちペリフェリン/RDSという糖蛋白のアミノ酸をコードしている遺伝子には多くの変異(geno-type)によって引き起こされる網膜変性の臨床型(phenotype)は多様で,「one gene→many diseases」であることは明らかである。
現時点で報告されている変異は,インターネットで公開されているデータベースから検索すると表1のように,コドンは36か所,そのヌクレオチドの変異は43種のミスセンス/ナンセンス突然変異があり,それぞれ異なったアミノ酸に置き換わるか,またはストップコドンとして働いている。それによって引き起こされる臨床型は表1に示されるように黄斑ジストロフィ,網膜色素変性(いわゆる桿体—錐体ジストロフィ),パターンジストロフィ,錐体—桿体ジストロフィ,中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ,蝶型ジストロフィ,中心窩ジストロフィ,錐体ジストロフィ,白点状網膜炎などさまざまである。先に述べたように,この糖蛋白は346個のアミノ酸からなる錐体,桿体双方の視細胞外節円盤の縁(rim)に存在する構造蛋白で,円盤膜を4回貫通し,アミノ基とカルボキシル基がともに円板膜の外,すなわち視細胞の細胞質内に,また2つのループは円板内(細胞質外)に存在する1)。この糖蛋白は外節円盤の縁に存在することからその形態を維持することに重要な役割を果たしていると考えられている。最近ペリフェリン/RDS遺伝子の全長(12.5kb)に関する研究が発表された2)。それによるとこの遺伝子は,ウシ,人,マウス,ラット,ネコ,アフリカツメカエルなどで高度に相同性が維持されているという。例えばマウスとウシでは92.5%,マウスと人では91.3%,マウスとラットでは97.1%がアミノ酸配列が同じである。それはおそらく2種類の視細胞,すなわち錐体と桿体がこれらの種で共通に進化し,外節円盤の形態を維持してきたこと,さらにそれと変位による臨床型の多様性とは無関係ではない。この糖蛋白質の分子遺伝学的に確かめられた変異部位とその臨床型を色分けして書き込んでみると図1のようになる。そこでこのペリフェリン/RDSに関係したシリーズの最後にもう一度その多様性を確認し,なぜそのようなことが生じるのかを考えてみたい。
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.