Japanese
English
連載 眼の組織・病理アトラス・166
網膜剥離と視細胞のアポトーシス
Apoptotic photoreceptor cell death in retinal detachment
猪俣 孟
1
,
向野 利彦
1
,
田原 昭彦
2
,
高比良 健市
3
Hajime Inomata
1
,
Toshihiko Kohno
1
,
Akihiko Tawara
2
,
Kenichi Takahira
3
1九州大学医学部眼科学教室
2産業医科大学眼科学教室
3下関市高比良眼科
pp.1418-1419
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906952
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- Abstract 文献概要
感覚網膜が網膜色素上皮細胞層から長時間剥離していると,視細胞は変性または消失して(図1),重篤な視機能障害を残す。視細胞の内節が残っていれば,網膜が復位した場合に,外節の再生は多少とも可能である。しかし,すでに内節が変性したものでは,視細胞そのものが死滅消失する(図2)。視細胞消失の原因は,感覚網膜が網膜色素上皮層と離れることによる網膜外層の虚血もあるが,その他にアポトーシスapoptosisが重要な一因である。剥離網膜における視細胞のアポトーシスは,TUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated biotinylated deoxyuridine triphosphate nickend labeling)法を用いて,ヒトおよび実験動物で証明されている。ヒトの外傷性網膜剥離では,外傷後8時間ですでに視細胞のアポトーシスがみられるという。
近年,アポトーシス誘発因子apoptosis-inducingfactor(AIF)がミトコンドリア内膜と外膜の膜間腔intermembrane spaceに存在することが明らかにされている。AIFの分子量は57kDで,AIFの塩基配列と緑膿菌の酸化還元酵素oxidoreductaseの塩基配列が高い相同性を有している。もともと細胞内のミトコンドリアは,約20億年前にバクテリアが真核細胞に侵入したものであり,私たちの身体は真核細胞とバクテリアが共生した細胞で構成されている。
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