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本号が発刊になった頃には,福岡の第63回日本臨床眼科学会も終わっていることと思います。新型インフルエンザ流行のピークや台風の接近が会期に重なると予測され心配しています。眼科専攻医の減少も心配です。初期臨床研修制度が導入されるまでは新規専攻医の数は毎年400~450人でしたが,導入とともに減少し今年は300人に満たなかったとも聞きます。東京地区への集中も問題です。大学では教室員の減少に加え,病院収支の改善圧力から診療負担が増え,教育への人員,時間不足が深刻です。来年から少し制度の手直しが始まり,民主党は医学部の定員増を打ち出していますが,流れを止められるか疑問です。教育・研究環境の充実のための打開策を早急に講ずる必要があります。
今月号の特集は「黄斑手術の基本手技」です。黄斑手術は今でこそ日常的な手術になりましたが,私が眼科医になった頃には黄斑領域は聖域であり,触るなど考えられないことでした。特に特発性黄斑円孔が閉鎖し視力が改善するようになったことは,近年の眼科学のトピックスの1つに挙げられます。後部硝子体剝離が起こる前に円孔が形成されるという肉眼的観察から病態を推察し,手術治療に発展させた過程は臨床医学のあるべき姿の模範といえます。当時は特発性黄斑円孔をみると,当然後部硝子体剝離による黄斑部網膜欠損だと思い込み,硝子体を詳細に観察することはなく,視力回復につながる治療など思いもよらないことでした。自らの診療姿勢を反省させられる疾患です。その後の発展は急速で,硝子体切除機器の進化,観察系の改良,硝子体の可視化などわが国も多くの貢献をしています。硝子体手術を始めた方にもベテランの方にも役立つ特集です。ぜひお目通しください。
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