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あとがき
稲木 紀幸
pp.1320
発行日 2024年11月20日
Published Date 2024/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214751
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外科医として長年携わってきた経験から,「こだわり」と「妥協」について思うところを述べたいと思います.外科医にとって「こだわり」は不可欠な要素です.手術の精度を高め,患者の安全を守るためには,細部へのこだわりが必要不可欠です.一方で,現実の臨床現場では「妥協」も避けられません.限られた時間と資源のなかで最善を尽くすには,時に妥協も必要となります.この相反する二つの要素をいかにバランスよく取り入れるかが,優れた外科医の条件だと考えます.過度なこだわりは手術時間の延長や周囲との軋轢を生み,逆に安易な妥協は医療の質の低下につながりかねません.
私が若手外科医に伝えたいのは,「こだわるべきところにこだわり,妥協すべきところで適切に妥協する」という姿勢です.例えば,手術の核心部分では妥協せず,周辺的な部分では効率を重視するといった具合に.ただ,この判断力は経験を重ねることでしか身に付かないかもしれません.また,チーム医療が重視される現代において,自身のこだわりを押し通すだけでなく,他者の意見に耳を傾ける柔軟性も求められます.時に自らの考えを譲歩することで,より良い結果が得られることもあります.
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