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あとがき
稲木 紀幸
pp.376
発行日 2025年3月20日
Published Date 2025/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800030376
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異業種交流は,企業や個人がみずからの業界の枠を超えて知識や経験を共有し,新たな価値を創造する取り組みです.近年,ビジネス環境の急速な変化や技術革新に伴い,その重要性がますます高まっています.異業種交流によって,参加者は自社や自身の強みや課題を客観的に認識し,新たな視点や発想を得ることができます.また,異なる分野の専門家との対話を通じて,イノベーションの種が生まれる可能性も秘めています.
このような異業種交流の概念は,外科手術の世界にも適用できるといえます.外科医療における「領域横断」は,異業種交流の医学版とも言えるでしょう.特に,膵臓周囲の手術は,この領域横断的な考え方が重要だと言えます.膵臓周囲の解剖は複雑で,他の重要な臓器や血管と密接に関連しているため,その手術には高度な技術と知識が要求されます.特に膵癌に対する手術では,消化管外科,肝胆膵外科,血管外科など,複数の専門領域の知識と技術を組み合わせる必要があります.膵頭十二指腸切除術では,膵臓だけでなく,胃・十二指腸,胆管,場合によっては血管の処理も必要となります.胃癌や横行結腸癌の手術でも,膵臓周囲の解剖に精通していることが必要ですし,浸潤を伴っていれば膵切除を行う必要があります.このような領域横断的アプローチは単に手術技術の向上だけでなく,何よりも患者さんにとってより良い治療成績につながることになります.

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