--------------------
あとがき
沖中 重雄
pp.258
発行日 1952年7月1日
Published Date 1952/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200295
- 有料閲覧
- 文献概要
戰爭中は世界各國の學者の状勢がわからなかつたが,戰後直ちに文献の流通と共に判明して來た。昔知つていた學者が何處に何をしているかを知ることはうれしいものである。獨逸や英國の學者でいつのまにか米國に渡つて研究しているものも少くないようである。
20年も前,私が呉先生について英國のオックスフォード大學にSherrington教授を訪問した時,研究のことでSherrington教授の弟子の1人のDenny-Brownという若いドクターと議論を交したことがあつた。最近米國に留學しているわれわれの教室の鎭目君からの便りによると,そのDenny-Brownが今ではボストンのハーバード大學で大いに活躍しているそうである。鎭目君がDenny-Brownに會つた時の話に,昔英國で我々が會つた際呉先生が出されたコーヒーを飮む時,チョツキのポケットから小瓶を出し,何か錠剤をコーヒーに入れて飮まれた。それはサッカリンであつたという話を思い出して懷しそうに話したそうである。呉先生は當時輕い糖尿病をわずらつておられた。そして氏はその時についていた私のことも思い出し,冲中は現在どうしているかといつて熱心にきいたそうである。その後間もなくDenny-Brown氏から手紙が來たが,my old friendと書いて懷しそうな文面であつた。同氏は神經系に關する業績を盛に出しているが,腦幹神經節を中心に多くの業績を發表しており,又肝腦症候群にも興味をもつているようである。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.