呼と循ゼミナール
右心負荷とその周辺(6)—肺うっ血(その1)
半田 俊之介
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.852
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204278
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右心負荷例の多くは肺静脈性肺高血圧症で肺うっ血を伴う。たとえば左室の収縮または拡張障害,僧帽弁機能の破綻の場合,血流を保つに必要なpreloadを左室に与えるために左房圧の上昇がおこる。高い左房圧は上流の肺動脈圧の増加といわゆる肺うっ血をきたす。肺うっ血(pulmonary congestion)は元来病理解剖学的術語と思われるが,一般臨床医の考えるそれは,労作時の息切れ,湿性ラ音,胸部X線上の肺うっ血所見などであろう。近年では広く普及したベッドサイドの右心カテ法が重症例の肺循環の圧および血流量に関する情報をもたらし治療の有用な助けとなる。
肺うっ血の病態生理は,左房圧の上昇に伴う肺循環系の血液のうっ滞,間質の浮腫.さらに肺胞への水分漏出と比較的単純に理解することもできよう。臨床例において,その研究に先鞭をつけたのは1960年代,Dockらなどであろう。経胸廓的左房穿刺法により肺血量(PBV)すなわち肺動脈起始部より,肺静脈—左房接合部までの肺血管内を流れる血液量を算出した。その後Yuら,Milnorら,香取らが経中隔左心カテ法を応用して肺血量を測定し,その増加を肺うっ血の指標として多くの発表がみられた。ここでは我々の成績の一部を紹介することにしたい。
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