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右室機能の解析は左室に比べるとなお不充分である。その第一の理由として一般に言及されるのは,左室と異なり右室の形態が複雑なことである。左室機能の理解に広く用いられている諸手段をそのまま右室に当てはめることは方法論的な限界により困難な場合が多い。
これとは別にStarrの犬の実験など古くから右室自由壁を破壊しても著しい循環障害や右心不全はみられないことが知られている。極論として右室不用を主張する学者もあったが.その後異論がみられる。Rushmerは右室の血液駆出に関与するメカニズムを以下の三者に整理している。すなわち(a)右室内側のトラベクルおよび乳頭筋の収縮が三尖弁論を心尖方向へ引き寄せるために生じる右室長軸の短縮,(b)右室自由壁が凸型に彎曲した中隔面に近づく動き,さらに(c)左室腔を取り巻く深層輪状心筋線維の収縮による中隔の彎曲の増加,右室自由壁の中隔附着部の牽引である。このうち右室のいわゆるフイゴ運動(bellow action)に重要なのは(b)で,(a)の動きは大きいが,ポンプ機能にはあまり役立たないとしている。このような正常の実験動物における生理学的検討は,右室のポンプ機能に右室自由壁,心室中隔および左室心筋の収縮が関与していることを示している。では何らかの病態,たとえば右室負荷が生じた場合,そのポンプ機能はどのように変化するであろうか。その詳細はなお充分解明されていない。慢性の右室圧負荷例では右室自由壁の肥大拡張にともない右室は機能形態が左室に近づき,逆に左室は右室に近似した形態をとることが知られてきた。右室左室の相互関与(ventricular interference)については次回にゆずる。
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