呼と循ゼミナール
右心負荷とその周辺(10)—左心への影響(その2)
半田 俊之介
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.362
発行日 1984年4月15日
Published Date 1984/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204422
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前回は,臨床例で慢性の右室圧負荷が左室の短軸横断面に歪みをおこすことを示した。今回は左室の血行力学に及ぼす影響について論じたい。よく知られているように右室の後負荷が増大する状況は,必然的に左室前負荷を軽減する方向に働く。循環回路という直列の系の概念の中では,これはごく当たり前のことであろう。ここではその際にみられる別のもう1つの波及効果,すなわち右室圧負荷により左室が歪むごとく,右室から左室への機械的関与によって生じる血行力学への影響について考察する。実際の循環系において,このような影響を明確に分離抽出し証明することは,回路を流れる血液が生み出す間接的な右心左心の相互干渉を除外することができないため,難しい。そこで循環回路を介する右心左心の血行力学的干渉をほぼ完全に除去し比較的純粋に機械的関与による血行力学への影響のみを検討するための一手段として,右心系と左心系を分離灌流する実験を行った(図1)。
1実験に2頭の犬を用いた。右室左室の直接的な相互関与を証明するために使う半摘出心と,その循環を支持する別の犬の循環系を組み合せている。半摘出心となった実験犬の左室から駆出される動脈血は大動脈を経て人工のリザバーへ上り,左心房へ帰来する。右心室から駆出される静脈血も同様にもう1つのリザバーを経て右心房へ房る。この系では右心系,左心系の循環回路は遮断されている。ただし冠循環を介して左心系の血液が次第に右心系へ移行するため,支持犬の循環回路を用い調整を計る。このような灌流実験系を作製することは慣れてくるまでは困難で,特に正常の循環系を,個別に切換えるタイミングは容易ではない。
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