呼と循ゼミナール
呼吸生理研究と臨床(1)—AaDO2
太田 保世
1
1東海大学医学部
pp.984
発行日 1975年11月15日
Published Date 1975/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202830
- 有料閲覧
- 文献概要
本号から,北里大学冨田友幸講師との分担で,"呼吸生理研究と臨床"という主題のもとに,呼吸生理学的な基礎研究と臨床との接点といったことについて話題を進めたい。
臨床的にきわめて有意義な指標に,肺胞気動脈血O2分圧較差(AaDo2)がある。教科書を読めば,その正常値はおよそ10 torr以下で,換気・血流比(VA/Q)不均等,拡散障害およびシャントにより増大すると記載されていよう。さらに,高濃度O2吸入で短絡によるものが強調され,低濃度O2吸入では拡散障害の影響が強くでるとあり,AaDo2の測定,計算法まで読み下ると,呼吸機能検査にあまりfamiliarでない者にとって,多くの疑問を生ずるであろう。たとえば,AaDo2増大が上記の3要素で説明されるか,各種疾患とAaDo2が直結するか,それほど煩雑な計算の手順が不可欠か,いわゆる正常値に影響する要素は,などである。現在,上記の3要素以外にAaDo2に影響すると考えられている事象は,拡散・血流比(D/Q)不均等と,気相でのガス拡散による層状不均等とである。疾患の"診断"にAaDo2が直結するかという疑問には,AaDo2は(そして多くの呼吸機能検査法は)"病態"の機能的把握であることの理解度が解答となろう。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.