呼と循ゼミナール
呼吸生理研究と臨床(3)—拡散と肺拡散能力
太田 保世
1
1東海大学医学部
pp.228
発行日 1976年3月15日
Published Date 1976/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202879
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拡散diffusionに関するFickの第一法則では,ある物質Xの単位時間の移動量Mxは,拡散面積A,拡散係数Dx,濃度勾配△Cxに比例し,拡散距離Eに反比例する。すなわち,Ṁx=Mx/△t=A・Dx・△Cx/E,である。
Eが不明の条件では,Dx/Eという単位をpermeability coefficientと定義することがある。呼吸におけるガス拡散現象の取扱いでは,濃度勾配の代りに分圧勾配△Pxを導入する必要があり,Ṁx=A・Dx・βx・△Px/E,となる。βxは,ガスXのcapacitance coefficientで,不活性ガスあるいはヘモグロビンなどを含まぬ溶媒を扱う場合は溶解係数に等しい。上式の移行で,Dx・βx=Ṁx・E/A・△Px,を得,このDx・βxがKroghの拡散係数といわれるものである。呼吸生理学などでの実験条件下では,Dx,βx,A,Eなどの値が不明のことが多く,Ṁx/△Px=A・Dx・βx/E=Gx,のように,単位時間に,単位分圧勾配のもとに拡散する物質Xの量を,diffusive conductance, Gxと扱うと便利で,これが肺機能検査でいう拡散能力,DLの定義でもある。
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