呼と循ゼミナール
呼吸生理研究と臨床(2)—肺の圧量曲線
冨田 友幸
1
1北里大学医学部内科
pp.141
発行日 1976年2月15日
Published Date 1976/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202866
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肺の圧量曲線は胸腔内圧と肺気量との関係すなわち肺の弾性を表わす曲線であり,臨床的には肺気量変動と食道内balloon法による胸腔内圧とを同時にX-Y recorderに記録することによって求められる。測定に際して粘性によって生ずる圧力が記録されないようにquasi staticに肺気量を変動させる。健康成人では最大吸気位食道内圧は約30cmH2Oの陰圧であり,肺気量の減少に伴なってその陰圧度は漸減し低肺気量では食道内圧は陽圧になる。食道内圧(胸腔内圧)と肺気量との関係は直線的でなく,1つの変曲点inflect1on pointを持ったゆるいS字状の曲線を呈する。呼気時の曲線deflation curveと吸気時の曲線infiation curveはともにS字状となるが両者は一致せず吸気時の曲線の方が陰圧側に位置する。このhysteresisは肺の表面張力によるものであり,もし空気の代りに食塩水を注入して肺を膨らませれば両曲線は一致する。吸気や呼気をはじめる肺気量によって肺の圧量曲線はさまざまなrouteを通って描かれる。つまり呼吸の仕方によって肺のrecoil pressureは必ずしも同じ肺気量でも等しくならない。
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