呼と循ゼミナール
呼吸生理研究と臨床(6)—不活性ガス
太田 保世
1
1東海大学医学部生理学
pp.666
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202933
- 有料閲覧
- 文献概要
臨床的な検査法あるいは研究の手段としての不活性ガスの応用は,とくに呼吸機能の分野では重要であり,今後もその機会がますと考えられる。不活性ガス(inert gas)は,狭義には,argon, helium, krypton, neon, radon, xenonの6種の希ガス(rare gas, noble gas)を指し,いずれも単原子分子で,化学的に不活性であり,元素相互または他の元素と結合しない。しかし一般的には,たとえばN2のように,反応性の乏しいガスをも含めて不活性ガスとしている。この"不活性"という定義における最近の問題点の1つは,希ガスの一つであるHeが化学的に不活性であっても,生物学的に何らかの作用を生体に及ぼすと考えられるようになっていることである。
さまざまな不活性ガスの応用例のそれぞれの問題点を枚挙する余裕はないので,比較的に歴史の古い,肺および組織からのN2 wash outのデータ処理の問題の一つに限って話を進めよう。multiple breath法による肺からのN2洗い出しが,臨床的に肺内N2排泄率として吸気(換気)不均等分布の検索に応用される。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.