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特集 iPS細胞を用いた心臓病の診断と治療
iPS細胞を用いた将来の重症心不全治療法の開発
Prospective Regenerative Therapy using Cells for End-stage Heart Failure
澤 芳樹
1
Yoshiki Sawa
1
1大阪大学大学院医学系研究科外科学講座心臓血管外科学
1Division of Cardiovascular Surgery, Department of Surgery, Osaka University Graduate School of Midicine
pp.489-494
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101957
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はじめに
近年,重症心不全患者に対する心機能回復戦略として,細胞移植法が有用であることが報告されており,既に自己骨格筋筋芽細胞による臨床応用が欧米で開始されている.われわれも,温度感応性培養皿を用いた細胞シート工学の技術により,細胞間接合を保持した細胞シート作製技術を開発し,従来法であるneedle injection法と比較,組織,心機能改善効果が高いことを証明し,骨格筋筋芽細胞シート移植による心筋再生治療の臨床研究も大阪大学附属病院未来医療センターにて開始した.
一方,2007年11月,日本の山中らとアメリカのThomsonらのグループがヒトiPS細胞の樹立に成功したニュースは世界中を駆け巡り,再生医療実現化に対する期待は大いに高まっている.実際に,ヒトiPS細胞の樹立が報道され,山中らが報告した雑誌「Cell」のオンラインサイトで閲覧できる,iPS細胞から作製された心筋細胞が拍動している動画を見たときの衝撃は記憶に新しく,再生医療の新たなブレイクスルーを目の当たりにした瞬間でもあった.
本稿では,今,注目を集めているiPS細胞について概説するとともに,iPS細胞を用いた心筋再生治療の現状と課題について,私見を交えて概説する.
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