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はじめに
2004年に初めてその詳細が報告されたTimothy症候群1,2)は,QT延長症候群のひとつのサブタイプ(LQT8)として分類された.しかし,その表現型は,QT延長に加えて致死的な心室性不整脈,房室伝導障害,手指・足指の癒合(合指症),顔貌異常,先天性心疾患(VSD,PDA,Tetralogy of Fallot),免疫不全,低血糖など多彩であった.その意味で,LQT7と分類されたAndersen-Tawil症候群と似通った点がある.遺伝子検索では,L型カルシウム・チャネルのαサブユニットをコードするCav1.2の共通したミスセンス変異(G406R;406番のグリシンがアルギニンに変換)が同定され,一躍注目された(図1).循環器病として最初のカルシウム・チャネル病であった.最初に報告された全例で認められた,このCav1.2 G406Rは,いわゆる体変異(somatic mutation)であり,死亡時の平均年齢は2.5歳で,生存例では,認知障害,自閉症,発育障害がみられた.この変異チャネルの機能解析では,従来,カルシウム・チャネルが示す膜電位依存性の不活性化がほぼ消失しており,そのためカルシウム・チャネルのgain-of-functionが起こり,QT延長さらに細胞内Ca負荷によると考えられる重症不整脈が起こることと想定された.
その後,多くの方法論を用いて本症候群の発症メカニズムが解明されており,さらにtransgenic mouseも作製され機能解析が行われている3).また最近,このヒトCav1.2 G406R変異に対応するウサギCav1.2 G436R変異を用いた解析では,カルシウム・チャネルC末端のIQドメインが,チャネル同士のclusteringに必要な部位で,このドメインからカルモジュリンが外れることにより,チャネルの機能的な統合(coupled gating)が行われ,より大きな電流を流すことが示された.そして,このG436R変異は,カルモジュリンとその結合部位であるIQドメインの親和性を障害して,coupled gatingが増強しチャネル活性を促進する可能性が報告された4).
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