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連載 細胞を用いた再生医療の現状と今後の展望――臨床への展開・Vol.24(最終回)
iPS細胞由来の再生心筋細胞移植による重症心不全治療法の開発
Development of a therapy for severe heart failure by transplanting iPS cell-derived cardiomyocytes
福田 恵一
1,2
Keiichi FUKUDA
1,2
1Heartseed株式会社代表取締役CEO
2慶應義塾大学名誉教授
キーワード:
再生医療
,
心不全
,
心筋細胞移植
,
iPS細胞
Keyword:
再生医療
,
心不全
,
心筋細胞移植
,
iPS細胞
pp.183-187
発行日 2025年7月12日
Published Date 2025/7/12
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294020183
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SUMMARY
心筋細胞は出生後には細胞分裂せず,細胞自体の大きさが肥大して成長することが特徴である.そのため,一部の心筋が壊死に陥ると残存心筋が肥大し代償されるが,心筋梗塞や心筋炎等のように大量の心筋が壊死した場合には心筋細胞が不足し,心不全の状態になる.これまでの心不全治療法は神経体液性因子を調節することにより残存心筋の収縮・代謝状態を改善する薬物療法が中心であり,不足した心筋細胞を外部から補塡する治療法は存在しなかった.ES細胞やiPS細胞1,2)の発見以来,こうした多能性幹細胞を用いて心筋細胞を作製し,心筋細胞を補塡することで心不全を治療する試みがなされ,さまざまな方法が考案された.しかし,iPS細胞等が残存すると,奇形腫等の腫瘍が形成されること,心筋細胞移植後に不整脈が惹起される可能性があること,心筋細胞の効率的な移植法が開発されなかったことなどの課題があり,すぐには臨床応用できなかった.筆者は1995年から骨髄間葉系幹細胞3),2000年からはES細胞,2007年からはiPS細胞を用いて心筋再生研究を行ってきた.2015年には上記の課題がほぼ解決できたのでこれを社会実装したいと考え,大学発ベンチャーHeartseed社を設立し,臨床応用を目指した.2022年より虚血性心疾患に伴う重症心不全に対する臨床治験を開始し,2025年1月に全症例の組入れが終了した.当初はHLAを一致させようとしたこと,また新型コロナウイルス感染症のパンデミックがあったことから,組入れに3年間を要した.今後,その臨床成果が明らかになると思われるが,本稿ではその開発の経緯を紹介する.

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