巻頭言
喘息の多様性を考える
檜澤 伸之
1
1筑波大学医学医療系呼吸器内科
pp.455
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101958
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喘息の炎症病態はアレルゲンに対する抗原特異的なIgE抗体の獲得(アレルゲンへの感作),それに引き続く気道でのアレルギー性炎症として理解されてきた.一方で現在の若者は90%以上がダニなどの吸入抗原に感作されているが,すべてに喘息が発症するわけではない.さらに,中高年に発症する喘息の約半数はいずれの吸入抗原にも感作されていない.感作という獲得免疫の視点からだけではなく,個々の患者における気道組織の感受性,さらにはその多様性を抜きにしては喘息病態を語ることはできない.
喘息という疾患名は未だ発熱や貧血といった症候名の域を超えていないといわれるが,事実,われわれが日常接している喘息は数多くの分子病態から構成される症候群であり,明確な診断基準すら存在しない.外的因子と宿主因子とは複雑に絡まり,それらの因果的繋がりの複雑性が病態の多様性を創り出す.喘息症候群における個々の分子病態を明確にすることができれば,それぞれの病態における治療ターゲットの明確化,個々の分子病態をターゲットにした臨床試験の実施,診断や治療効果の判定に有用なバイオマーカーの開発などが期待される.
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