特集 これならわかる骨系統疾患とその周辺
総論
iPS細胞からの軟骨細胞誘導法と疾患iPS細胞モデル
妻木 範行
1,2
TSUMAKI Noriyuki
1,2
1大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科組織生化学
2大阪大学WPヒューマン・メタバース疾患研究拠点
pp.1613-1619
発行日 2024年12月10日
Published Date 2024/12/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001951
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はじめに
骨系統疾患を構成する軟骨形成異常症には,病態の詳細が解明されておらず,根治的治療薬がないものが多々ある。研究が進まない理由の一つとして,病変部位である成長軟骨を採取することができないため,研究材料を入手することが難しいことがある。そんななか,2007年にヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)が開発されてから,この課題を解決することが可能になってきた。体細胞をリプログラムすることによって作られるiPS細胞は,自己複製能と多能性をもつ幹細胞である。発生過程において初期胚が軟骨細胞へ分化する過程の知識を利用し,iPS細胞を軟骨細胞へ分化誘導し,さらに軟骨細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM)を産生させて軟骨組織を作る方法が開発されている。軟骨形成異常症患者の血液細胞などの体細胞からiPS細胞を経て試験管内で作った軟骨は,患者病変軟骨に相当する。iPS細胞由来軟骨細胞/軟骨組織は,軟骨形成異常症の病態解析と創薬開発の研究材料としての応用が期待されている。
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