特集 血液事業のトピックス―身近な献血からiPS細胞の活用まで
iPS細胞を用いた血液製剤開発の現状と展望
木村 貴文
1
1京都大学iPS細胞研究所基盤技術研究部門
pp.653-657
発行日 2013年8月15日
Published Date 2013/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102811
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はじめに
2006年に京都大学の山中伸弥教授らが学術雑誌「Cell」に発表した人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell,以下iPS細胞)1)は,発生学や遺伝学をはじめとする基礎生命科学分野の研究に大きな衝撃を与えただけでなく,難病に対する治療にパラダイム転換をもたらす核心的発明になるだろうと期待されている.分化した皮膚細胞であっても多能性幹細胞に先祖返りさせることが可能というコペルニクスの地動説にも通じる逆転の発想は,細胞や器官の進化に関するわれわれの理解に革命をもたらしたといえる.この大発明からわずか6年という異例のスピードで,山中教授にノーベル生理学・医学賞が授与されたことは記憶に新しい.「1日も早く難病の患者さんを助けられるように臨床応用研究を推進したい」,彼は受賞後のスピーチでこう述べている.
本稿では,難病に対する新たな治療法を確立するために必要な医療用iPS細胞が,京都大学iPS細胞研究所(Center for iPS Cell Research and Application;CiRA)でどのように開発され,医療用iPS細胞を用いた細胞治療や輸血医療の実現に向けてどこまで臨床研究が進んでいるかについて紹介したい.
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