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あとがき
相澤 久道
pp.650
発行日 2010年6月15日
Published Date 2010/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101505
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ベトナム戦争の頃,ダナン・ラング(Da Nang Lung)といわれる病気が流行した.ダナンはベトナム中部の古都で当時大規模な米軍基地があり,負傷した兵隊を治療する後方病院も置かれていた.そこに搬入された負傷兵の中で,何の肺疾患もなく肺以外の負傷なのに突然肺が真っ白になり,急性呼吸不全が起こり数日で死亡する患者が続発した.今ではこれがARDSであり,その発症機序も分かってきている.それから数十年が経過し,ベトナム戦争は風化しつつあるが,ARDSは今も難治性重症疾患の最たるものである.しかし,今月号の特集を読むと,少しずつではあるが,ARDSの治療も確実に進歩してきたことが分かる.びまん性汎細気管支炎や気管支喘息のように大きなブレークスルーがあったわけではないが,主として人工呼吸法や肺保護療法などにより臨床成績は着実に良くなっている.さらに新しい機序の薬物,新しい治療法の開発も行われており,今後が期待される.その進歩には,動物実験やin vitroの実験に加えて,臨床研究が大きな貢献をしている.
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