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あとがき
A
pp.301
発行日 1961年4月1日
Published Date 1961/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201066
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- 文献概要
最近とある会合で国内文献の抄録誌が一般に売れなくなつたと云う話が出た。これは医学のものだけに限らずすべての分野に於いてこの傾向が見受けられるとの事である。その理由として2つが上げられた。1つは,世の風潮としてeasyになつて来たので,論文を書くにも研究するにも昔のようにこつこつと先人の業績を洗わなくなつた。つまり研究が一般にflatになつたと云う事で,今一つは,日本の文献なんかおかしくて参照できない,外国の文献だけみていれば事足りると云う事だそうである。しかし日進月歩の学術,とりわけscienceの世界に於いて,先人の研究成果を知らずしてその研究の進歩乃至よき成果が得られようか。苦心惨憺して得た結果が既に先人によつて得られたものであるならばその間の努力は水泡に帰する。研究を進める上に於いて大切な事はまず先人の業績をよく把握する事ではなかろうか。その上に立つて自分の研究を進めればshort cutで最良の結果が能率的に得られるのである。その為にも関係領域の文献を知る事は大変必要な事であるし,特に最近のように雑誌の数が多くなつて来ると更に抄録誌が必要なはずである。外国ではExcerpta Medicaを始め有名な抄録誌が厳然と存在している。どうもこれは解せない傾向ではなかろうか。それを反映してか最近は一般に論文の引用文献が粗雑に扱われているように見受けられるが共々一考を要する事のように思われる。
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