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現在の呼吸器病学の成立に最も大きな貢献をなしたものは,呼吸機能,CTをはじめとする画像検査,そして気管支鏡だと思っている.この3つが有機的に結びついたとき最先端で最良の医療が提供できるばかりでなく,研究としてもこの3つの手法の組み合わせによって将来大きな発展が期待できる.診断学の基本は形態と機能の評価である.呼吸機能検査と画像検査は生体の外部から形態と機能を評価するものである.これに対し,気管支鏡は局所の形態・機能を調べ,必要に応じて検体の採取も行うことが出来る.呼吸器科医として基本中の基本の手技である.その意味で,今月の特集「気管支鏡手技を用いた医療の最新動向」は我々にとって大変役に立つ論文が揃っている.気管支鏡の診断学的価値は言うに及ばず,治療手技としても応用の範囲が拡がりつつあることがよく分かる.
気管支鏡のさらなる応用はないかと考える.昔,東北大学の赤坂喜三郎先生は気管支鏡を用いて微小電極を気管支平滑筋に挿入し平滑筋の活動電位を測定した.おそらくヒトの生体で気道平滑筋の電位を測定した唯一のものである.また,瀧島任先生はanterograde catheterにより気管支内に留置したセンサーにより,中枢と末梢の気道抵抗を分離測定している.この方法は現在も研究的に応用されており,喘息の末梢気道病変の検出などに海外でも用いられている.いずれも素晴らしいアイデアであり,論文を読んだ時は興奮したものである.このような機能的な面の評価に気管支鏡が使えないだろうかと考えてしまう.それも研究目的だけで終わらず,日常臨床にも応用できないかと考える.心電図や心エコーのようにベッドサイドで行うことの出来る検査が最終的な目標である.今このようなことを考えると,夢のような話と思われる.
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