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■症例
77歳の男性。身長165cm,体重56kg。30歳から1日20本の喫煙歴があり,1か月前から禁煙。日常生活は自立。階段を2階まで息切れせずに上ることができる。合併症は,高血圧,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患(COPD)。呼吸機能検査は,肺活量(VC)3.05L,1秒量(FEV1.0)1.75L,1秒率(FEV1.0%)62%,対標準1秒量(%FEV1.0)67%。胸部CT画像では,右上葉に胸膜陥入像を伴う2cm大の結節影と,気腫性変化を背景に多発するブラがあり。今回は,右上葉の肺癌疑いに対して,胸腔鏡補助下右肺上葉切除術が計画された。
■麻酔経過
麻酔方法は硬膜外麻酔併用の全身麻酔を選択。T6/7から硬膜外カテーテルを挿入した後に,プロポフォール,レミフェンタニル,ロクロニウムで全身麻酔導入を行った。ビデオ喉頭鏡(McGRATHTM MAC)を用いて,37Fr左用ダブルルーメン気管支チューブdouble-lumen endobronchial tube(DLT)を気管挿管し,気管支鏡でDLTの位置を確認した。維持はプロポフォール,レミフェンタニル,ロクロニウム,硬膜外麻酔で行った。分離肺換気中の呼吸器設定は従圧式調節換気(PCV)を選択した。経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)92%以上を目標に,吸入酸素濃度(FIO2)を調節し,pH 7.2〜7.4,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)50〜60mmHgを目標に,1回換気量が理想体重あたり4〜6mLとなるように,吸気圧を調節,呼気フローをみながら換気数を15〜20回/minで調整した。胸壁と肺の癒着があり剝離に時間を要したが,予定どおり右肺上葉切除術を実施した。リークテストでは15cmH2Oで肺切離面からリークがあり,合計4回のリークテストを実施後,最終的にシート状生物学的組織接着・閉鎖剤を併用して修復し,胸腔ドレーンを留置して手術が終了となった。手術時間は2時間37分。
術後鎮痛は患者自己調節硬膜外鎮痛(PCEA)を,0.17%レボブピバカイン4mL/hrの持続投与とボーラス投与量3mL,ロックアウト時間30分の設定で開始し,閉創時にフェンタニル100μgを静脈内投与した。胸部X線写真で肺が拡張していることを確認し,これから覚醒,抜管というタイミングで,術者は抜管時にエアリークが増悪しないか心配そうに胸腔ドレーンを観察している。麻酔科医は,エアリークの原因となる咳をさせない抜管を実施する必要がある。
さて,あなたならどうする?

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