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■症例
75歳の男性。身長170cm,体重100kg(BMI 35)。50年×30本の喫煙歴があり,左上葉肺癌(Stage ⅡA)と診断された。ロボット支援胸腔鏡下左上葉切除術および肺内・縦隔リンパ節郭清が予定された。既往歴に慢性閉塞性肺疾患chronic obstructive pulmonary disease (COPD)があり,CT検査では肺気腫像が顕著であった。1秒率は50%で,常時喀痰の訴えがあったものの,Hugh-Jones分類Ⅰと運動耐容能は保たれていた。
■麻酔経過
入室時のバイタルサインは血圧140/70mmHg,心拍数70bpm,経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)98%(室内気)であった。前酸素化後,プロポフォール150mg,レミフェンタニル0.3μg/kg/min,ロクロニウム50mgで全身麻酔を導入した。気管支形成術が追加される可能性も考慮し,右用ダブルルーメン気管支チューブdouble-lumen endobronchial tube(DLT)を気管挿管後,気管支ファイバースコープ(以下,ファイバー)で右気管支に誘導し,位置を調整した。その後,右側臥位にして脊柱起立筋面ブロックを実施した。手術開始前に吸入酸素濃度(FIO2)1.0で換気後,従圧式調節換気(PCV),最高気道内圧16cmH2O,呼気終末陽圧(PEEP)5cmH2O,呼吸数16回/minで一側肺換気を開始し,1回換気量250mL程度を得られた。その後のFIO2 0.6でSpO2は94%であった。
手術開始後にSpO2 85%,1回換気量150mLとなった。チューブ位置異常を疑い,FIO2 1.0にしてファイバーで確認すると,右上葉枝がチューブで閉塞していた。手術を中断して適正位置へ調整した。換気量は240mL,SpO2 96%となって,しばらくは一側肺換気を維持できていたが,徐々にSpO2 88%,換気量は180mL程度に低下してきた。酸素濃度を上昇させようとしたところ,実はチューブ位置の調整後はFIO2 1.0のままだった。
さて,あなたならどうする?

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