特集 長引く咳
咳の病態生理
泉 孝英
1
1京都・中央診療所
キーワード:
咳反射
,
受容器
,
咳中枢
,
効果器
,
心因性咳
Keyword:
咳反射
,
受容器
,
咳中枢
,
効果器
,
心因性咳
pp.1004-1006
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100746
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咳は,くしゃみとともに,気道内に侵入した異物や気道内の分泌物の除去を目的とした生体の防御反射であり,基本的には生体にとって不利な反応ではない.しかし,咳,とくに慢性咳嗽がなぜ生体に悪いのかというと,心臓,呼吸器への影響(負担)が大きく,これらの臓器に合併症をきたすことがあるからである.安静の妨げや睡眠障害をきたすほか,時には嘔吐,上腹部痛を起こしたり,咽頭・胸壁の不快感・痛みをもたらすなど,体力を消耗させることになるからである.咳は非常にエネルギーを使う動作であり,1分間に1回の咳を10時間続けると1,250カロリーのエネルギーを消費すると計算されている.半世紀前,結核がわが国最大の国民病であった時代,咳は高熱とともに,結核患者の体力を消耗させる最大の要因であった.
「咳の病態生理」と題した本稿においては,咳反射の経路,機序,咳の原因について記載する.しかし,咳は反射運動としての咳だけではない,心因性咳と呼ばれる意識下に行われているとみなされている咳もあるので,このような咳の存在についても若干の記載を試みておくこととしたい.
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