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あとがき
絹笠 祐介
pp.756
発行日 2025年6月20日
Published Date 2025/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698570800060756
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今回のテーマは骨盤内臓全摘術です.レジデント時代に「骨盤内臓全摘術ができる外科医になりたい」と思ったことが,私が大腸外科を専門としたきっかけでした.当時,血の海になることも少なくなかった難手術を上手にこなす,素晴らしい技術を持つ恩師に出会い,その姿はまさに憧れでした.そもそも外科医になったきっかけは,せっかく医者になるのだから,なんでも治せる=飛行機の機内でCAさんからDrコールがかかった時に手を挙げて颯爽と対応できる,格好良い医者になりたいというものでした.
働き方改革や外科医へのインセンティブ導入など,様々なアプローチで外科医の待遇改善が進んでいることは大変喜ばしいことですが,結局は若者が憧れるような,格好良い姿を見せることが大事なのかもしれません.開腹手術時代は,まさに豪快で壮絶であり,外野にいてもスリルと興奮に満ちあふれていました.最近は鏡視下手術の普及で,(患者にとっては良い)繊細で丁寧な手術が行われるようになった一方で,術者とは対照的に傍観者のスリルと興奮の度合いが減り,ややもすれば,動きの少ない手術を延々と皆で見守らなければならない環境に置かれることがあります.開腹時代の手術はもっと過酷だったと思いますが,そうした状況が見えなかったことが,かえって良かったように思えます.

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