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あとがき
絹笠 祐介
pp.1406
発行日 2019年11月20日
Published Date 2019/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407212772
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医者になってはじめての手術が鼠径ヘルニアでした.現在のような臨床研修制度がなく,医師免許を取得した翌月には1人で当直バイトまでこなし,大学ではアッペやヘルニアの患者さんが来れば執刀さえできた時代でした.当時の手術はMcVay法やIliopubic tract repair法でしたが,何度やってもヘルニアの手術は難しく,事前に読んだ手術書と実際の術野に現れる景色が全く違い,「何がなんだかわからないまま終える」を繰り返していました.外科医としての自信をなくす最初の経験でもあり,今となっては笑い話ですが,当時は大きな壁にぶつかっていたのだと思います.
麻酔科研修を終え,関連病院に出向した際に,手術をとても丁寧に行う院長先生に助手をしていただいた際に,時間はかかりましたが,満足出来る鼠径ヘルニア手術をはじめて執刀できました.まさに教科書どおりの景色が現れ,ようやくヘルニア手術が理解できたときの感動は今でも忘れられません.手術は回数をこなして徐々にうまくなるのではなく,経験(努力)を重ねていくなか,とあるタイミングで上達するのだと感じていますが,最初の貴重なステップアップの瞬間でした.
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