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今回の特集は7月に発刊された大腸癌治療ガイドラインについてでした.私は委員長として,本ガイドラインの作成に携わってまいりました.本ガイドラインは,一般病院の医師が診療を行う際の指標になることを目的として,作成されています.特徴として,Mindsを参考にしつつもとらわれない,エビデンスの質と推奨の不一致を許容するということが挙げられます.エビデンスの多くは欧米発となる中で,NCCNガイドラインやコクランレビューのようなものであれば作成にそれほど苦労はしませんが,医療事情の違う日本にこれらのエビデンスをどう反映させるか?は非常に難しい課題となります.各領域の専門家がそれぞれの知識と経験を持ち寄り,議論を重ねて一つの指標を提示する形になりますので,その人選は非常に大事なものになるわけです.このようなことから,委員の構成に関して,業績(impact factor)で委員を決めるべきとの意見が出ることもありますが,もちろんエビデンスを知っていることは大事ですが,こちらは今のご時世でそれほど難しくなく,むしろ実際の臨床経験が豊富である事のほうがはるかに大事かと思います.委員全員,自分の好みの治療を押しつけることだけは決して行わずに作成にあたっています.Mindsには患者など一般市民の参画も求められていますが,専門的な知識とは別の治療経験がない人の意見をどのように組み入れるかも大変難しい問題です.患者の病態,生き方や考え方,外科医の技術も千差万別です.ガイドライン通りの治療が適していないことも多々ありますので,治療を行う医師としては,ガイドラインから外れる理由をしっかり説明しつつ,個々の患者に適した治療を提示できる能力が求められます.
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