疑義照会における薬剤師の心理的安全性確保に向けた体制導入の効果

要旨

　本研究では，医師の高圧的な疑義照会応対事例の共有と注意喚起を目的とした組織体制の導入が，薬剤師の心理的安全性に与える影響を評価した．

　2023年4月に香川大学医学部附属病院において本体制を導入し，導入前後の疑義照会件数の推移を調査した．さらに，導入後の2023年12月に薬剤師を対象とした心理的安全性に関するアンケートを実施した．

　その結果，1カ月当たりの疑義照会件数の中央値は72件から97件へ，調整済み疑義照会件数（処方箋100枚当たりの当該月の疑義照会件数）の中央値は0.26件から0.37件へと，それぞれ導入後において有意に増加した（p<0.001）．また，体制導入後において，薬剤師32人のうち約半数の15人が疑義照会に関する病院内の雰囲気を肯定的に評価し，否定的な評価は1人のみであった．

　これらの結果は，薬剤師の心理的安全性を確保する体制の導入が，疑義照会の促進を通じて患者安全の向上に寄与する可能性を示唆するものである．