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■はじめに:病院が「学習する組織」化する理由
病院は,安全で質の高い医療を提供することを社会に求められている.医療の質は「個人と集団に対する医療サービスが望ましいアウトカムをもたらしうる可能性を高める度合いと,現時点の専門知識に合致する度合い」と定義される1).しかし,現在の医療システムは「望ましいアウトカムをもたらしうる可能性」を高められてはおらず,このような状態を克服するために,病院は「学習する組織」への変革を求められている1).
「学習する組織」とは,アージリスとショーンが最初に提唱し2),センゲの著書3)によって広く知られるようになった概念である.ここでいう「学習」とは単なる知識の習得ではなく,世界の認識を変え,自己の創造する能力を伸ばし,以前にできなかったことができるようになることで,「発達を導く学習(Learning Leading Development)」ともいわれる4,5).「学習する組織」では,このタイプの学習が定着している.職員達は主体的に「望んでいる結果を生み出す能力を拡大」させ,「新しい発展的な思考パターン」を育て,「共に学習する方法を継続的に」学ぶ.その結果,「環境の変化に柔軟に適応して,人々の自発的な革新と創造によって,進化し続ける」組織になるのである6).
さて,病院は,複雑な課題達成や問題解決に絶え間なく直面している.日常業務では患者のリスクを可能な限り低減するよう努め,より質の高い医療の提供を目指して活動し,加えて先般のコロナ禍のような社会状況の変化に対応していかなくてはならない.つまり,病院は「学習する組織」に変わらなければ,組織としての目的を果たすことができないのである.
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