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あとがき
朝比奈 昭彦
pp.360
発行日 2025年4月1日
Published Date 2025/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.002149730790040360
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「光陰矢の如し」という言葉が,この年齢になると深く心に響きます.気づけば還暦を過ぎ,日本皮膚科学会でも年長者として責任の一端を担う立場となりました.振り返ると,新人時代,昭和の終わり頃は亜鉛華軟膏にホウ酸が含まれており,無我夢中で働いていた日々が昨日のことのように思い出されます(ちなみに,「ボチ」の「ボ」は,ホウ酸(ボール)チンクザルベに由来しています).当時は多くの入院患者が処置を必要とし,毎日2回,自らの手で軟膏を塗り,シャワーの介助も行っていました.仕事の合間には学会発表用のポジフィルムスライドを手作りし,学会会場では昼食代わりに飲食店マップを渡され,携帯電話がないために他の先生方と連絡を取るのに苦労したことも,懐かしい思い出です.
あの頃,新人が系統的な指導を受ける機会は少なく,先輩の背中を見て学ぶのが当たり前でした.しかし,時代が変わり,そのような指導方法が今では必ずしも適していないことを実感しています.現在,指導者として次世代に知識を伝える責任の重さを痛感し,長年にわたる実践的な経験をどのように効果的に伝えるか,日々模索しています.また,若手には,かつての自分たちのように主体的に学ぶ姿勢を持ち続けてほしいと願っています.

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