治療 107巻4号 (2025年3月発行)

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第1特集　高齢者のCKD診療

巻頭言小田川　誠治 107巻4号 , 2025年3月 , pp.423-423

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高齢者CKDの特徴（総論）𠮷野　純 , 神田　武志 107巻4号 , 2025年3月 , pp.424-427

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Point

― 人口の高齢化に伴い，わが国における慢性腎臓病（CKD）患者数は，増加の一途を辿り，2024年現在約2,000万人（成人の5人に1人）と推定されている．

― 腎臓の加齢性変化（ネフロン数の減少，糸球体硬化，尿細管萎縮，腎間質領域の線維化，腎血流量の低下など）が，高齢者CKDの病態形成に関与する．

― 高齢者CKDは加齢性の腎機能低下と腎疾患が混在している可能性が高く，eGFR変化率（ΔGFR），尿タンパクなどにより慎重に診断・重症度の評価を行う．

― 高齢者CKDは病態や治療反応性に個体差が大きいため，腎臓専門医を介した，かかりつけ医との診療連携，多職種連携による個別化医療，集学的医療を実践していくことが腎予後改善に重要となる．

高齢者CKDを診療する際の注意点吉田　真帆子 107巻4号 , 2025年3月 , pp.428-431

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Point

― 高齢者慢性腎臓病（CKD）の原因には加齢による変化に加えて，糖尿病，高血圧，心血管疾患，脂質異常症，糸球体腎炎などが混在しており，純粋な加齢による腎機能低下と腎疾患の合併との鑑別が必要である．

― 高齢者は複数の合併症を有しており，サルコペニア・フレイルなど個体差が大きい．CKD の管理においては個別に介入する必要があり，薬剤による有害事象やポリファーマシーの回避が重要である．

急性腎障害の救急対応を心得る佐々木　弥生 107巻4号 , 2025年3月 , pp.432-434

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Point

― 急性腎障害（AKI）とは腎臓の急激な機能低下により腎毒性物質の排泄・水分量の調節・酸塩基の調節・電解質の調節ができなくなった状態である．

― AKIの診断は血清クレアチニン濃度と尿量に基づくが，状態が不安定な場合は診断よりも初期治療が優先され，その判断が求められる．

― 自施設の設備や自身の対応能力を鑑み，どこまでの対応を自身で行うのかをイメージしておくことが望ましい．

腎性貧血佐藤　陽隆 , 神田　武志 107巻4号 , 2025年3月 , pp.436-440

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Point

― 腎性貧血の診断は除外診断である．

― 各ガイドラインでの診断基準，治療目標を参考にしつつ，患者の状態に応じ治療選択する．

― 鉄欠乏の検索は必須であり，診断時は積極的な鉄補充を検討する．

― 近年では従来のESA製剤に加えて，経口投与できるHIF-PH阻害薬を使用可能となっているが，合併症について注意が必要である．

高齢者CKDにおけるACPと緩和医療今田　敏宏 107巻4号 , 2025年3月 , pp.442-446

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Point

― 高齢者の慢性腎臓病（CKD）の治療では，アドバンス・ケア・プランニング（ACP）と共同意思決定（SDM）が重要である．

― 患者の価値観を踏まえ，透析や保存的腎臓療法（CKM）を検討する．透析の非導入や中止が増えるなか，緩和医療や症状緩和が必要となり，多職種で支援する．

― ACPは繰り返し行い，最善のケアを目指す．

CKD患者の輸液─よくある誤解からの脱却─ 柴﨑　俊一 107巻4号 , 2025年3月 , pp.447-450

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Point

― 輸液の適応を考える．CKD患者は輸液の安全域が狭いので，不要な輸液はかえって害！

― CKD患者でも蘇生輸液は輸液量をケチらない．その分，モニタリングをしっかり！

― CKD患者の維持輸液はちょっと少なめがコツ！

― 輸液でもKフリーが必須ではない．

低ナトリウム血症／高ナトリウム血症小川　敦子 107巻4号 , 2025年3月 , pp.452-455

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Point

― 高齢者では薬剤や基礎疾患など多因子が交絡してNaおよび水の恒常性維持に障害が生じ，血清Na異常をきたしやすい．

― Na異常では補正による可逆的・不可逆的合併症があるため，治療においては補正速度と合併症にとくに注意して診療にあたる必要がある．

高齢者CKDのカリウム─ 外来での高K 血症を主に─ 中村　昌平 , 永井　友基 107巻4号 , 2025年3月 , pp.456-459

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Point

― CKD患者における血清K値の管理目標は4.0〜5.5 mmol/Lであるが，高K血症の頻度が高い．

― 緊急性のある高K血症は専門医療機関へのすみやかな紹介を行う．

― 軽症〜中等症の高K血症では，薬剤，食事，アシドーシス，体液量を確認し，介入を行う．

― 心不全やCKD G3b〜G5を有する場合，K吸着薬を使用しながら極力RASiやMRAの継続を目指すが，管理困難な中等症の高K血症では減量や中止を検討する．

プライマリ・ケア医こそ知ってて得する電解質─高Ca血症，高Mg血症─ 中村　考志 , 柴﨑　俊一 107巻4号 , 2025年3月 , pp.460-464

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Point

― 一見“非特異的”な症状で高Ca血症・高Mg血症を鑑別にあげる．

― 高Ca血症・高Mg血症は常に薬剤性を考慮する．

― 高Ca血症は悪性腫瘍との関連もあり，ルーチンでの採血が望ましい．

― 血清Ca・Mg値と腎機能，心機能，循環動態などを踏まえて治療方針を決定し，透析が必要な状況ではないか常に注意する．

利尿薬平井　健太 , 柴﨑　俊一 107巻4号 , 2025年3月 , pp.465-469

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Point

― 体液量評価をしながら，適切に利尿薬を使用する．

― ループ利尿薬の薬物動態を理解し，効果的な量を投与する．

― 利尿薬抵抗性に対して，複数回投与や利尿薬併用を考慮する．

― 高齢者CKDでは水・電解質・併用薬の細やかな調整が必要である．

注意すべき薬剤10選上野　敏憲 107巻4号 , 2025年3月 , pp.470-473

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Point

― 高齢CKD患者への薬剤使用時の注意すべきポイントとして，①薬剤の副作用としての腎障害，②腎排泄型薬物の腎機能に応じた減量の2点があげられる．

― 腎排泄型薬物は添付文書の腎機能別投与量に従って処方するが，腎機能評価法として糸球体濾過量（GFR），推定クレアチニンクレアランス（Ccr）などが混在している．筋肉量の低下した患者ではシスタチンC（Cys-C）に基づくGFR推算式も活用する（表1）^1）．

― シックデイには薬剤性の腎障害予防のため休薬が必要な場合があり，医療機関を受診する．

CKDにかかわる話題の薬小田川　誠治 107巻4号 , 2025年3月 , pp.474-477

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はじめに

　慢性腎臓病（chronic kidney disease：CKD）の管理は，リスク管理を中心とした「守り」の治療から，腎機能低下抑制，心血管疾患（cardiovascular disease：CVD）発症抑制といった「攻め」の治療の時代になった．本稿ではCKD診療のgame changerとなる可能性がある薬剤のうち，ナトリウム・グルコース共輸送体2（sodium glucose cotransporter-2：SGLT2）阻害薬，フィネレノンについて，概要，使い方を解説する．

第2特集　医師の働き方改革期待と現実，次なるステップ

巻頭言森屋　淳子 107巻4号 , 2025年3月 , pp.479-479

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「医師の働き方改革」を推進させるために森屋　淳子 , 西村　真紀 , 家　研也 , 佐藤　博樹 107巻4号 , 2025年3月 , pp.480-487

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医師の働き方改革における生産性向上と生成AI活用香田　将英 107巻4号 , 2025年3月 , pp.488-492

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Point

医師の働き方改革では，業務効率化と医療の質の向上の両立が求められており，生成AIの活用が1つの解決策として期待されている．

生成AI の活用には医療情報の適切な取り扱いが必要不可欠であり，各種ガイドラインに準拠した運用が重要である．

生成AI は医師の業務を完全に代替するものではなく，一般的なタスクの効率化や専門的判断の支援ツールとして位置づけられる．

ワークライフバランス─三兎を追う者は三兎を得られるのか─ 相原　茉里 107巻4号 , 2025年3月 , pp.494-497

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Point

すべてを「同時にこなす」ことに固執せず，手放すことも必要．

タスク整理を通して，可視化，優先順位づけをし，定期的に見直す．

セルフメンテナンスはモチベーションにつながる．

海外の学会のwell-beingの取り組みや動向，日本との違い河田　祥吾 107巻4号 , 2025年3月 , pp.498-501

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Point

医師のburnoutは世界的に大きな問題で，とくに若手医師は危険が高いとされている．

持続可能な医療提供システム維持のため，各国では国家・学会レベルで取り組みが始まっている．

個人要因だけでなく，文化的・構造的要因もあるため，組織的な取り組みが必要である．

連載

自然に逝くということ永井　康徳 107巻4号 , 2025年3月 , pp.416-417

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心不全に対する薬物療法で，生活の質は改善するのでしょうか？青島　周一 107巻4号 , 2025年3月 , pp.418-420,510-511

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　心不全治療に関する主要なランダム化比較試験（RCT）では，心不全入院と心血管死亡の複合アウトカムを一次エンドポイントに設定することが多い．しかしながら，心不全患者が入院する理由は必ずしも心不全とは限らず，同エンドポイントが心不全患者の生活の質を改善しているかどうかについては議論の余地も多い．今回は，心不全患者における患者報告アウトカム（PRO）を評価した主要なRCTを紹介したい．

強心薬が先か，利尿薬が先か？そしてニトロとNPPVの使い時はいつ？⼭⼝　裕崇 , 川上　将司 107巻4号 , 2025年3月 , pp.504-508

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　あっという間に，もう3 月！桜も咲いてくる頃で，新年度が目前ですね！！前回は心筋梗塞を軸に，心筋虚血との向き合い方について深めていきました．虚血が起こると心筋の拡張障害から進展していくという“ischemic cascade”を意識しつつ，時相を合わせてフォローすることの大切さも学びました．

　さて，日常診療では呼吸困難や胸部症状をみて，うっ血もあるし組織低灌流もあるし……どちらから介入すればよいのか，逡巡してしまうこともあります．これさえ使っておけばよい！というような確立したエビデンスでもあれば嬉しいのですが．胸部レントゲン画像が真っ白で酸素投与も必要だと，低血圧も心配だけれども恐る恐るフロセミド静注……というのは，割とありがちな間違ったプラクティスかもしれません．

　「⼼不全」と十把一絡げにせず，まず右⼼系と左⼼系のどちらが問題なのか，肺うっ⾎（＝肺水腫）で困っているのかポンプ失調（＝低心拍出）で困っているのかを分けて考えることが大事であるのはわかってきましたが，いざ治療となるとわからないことばかり……．そこで，ショウジ先生に聞いてみた！

子どものこころのつまずきを漢方で支える！橋本　進一 107巻4号 , 2025年3月 , pp.512-519

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子どもがこころのつまずきで学校に行けないときの考え方

▶ 明らかないじめなどが存在しないにもかかわらず，小児期にこころのつまずきを経験し，不登校に陥るケースが少なからず存在する.

▶ 小児期のこころのつまずきは，その後の一生を左右する重大事案である.

▶ 大人からみれば何の問題もないようなことでも，小児期のこころは知らないうちに傷つき，学校という集団生活に対する不安感が生じてしまう.

▶ 不安感が短期で解消されればよいが，持続すると予期不安が生じ，学校に行くことができなくなる.

▶ このようなケースの背景には，発育段階でのこころの脆弱性が存在すると考えられる．五臓でいえば，心しんが発育途上にあるために，ストレス負荷がかかると心しんが気を消耗（心気虚）し，こころの安定感が損なわれ，不安感が生まれる．西洋医学的には繰り返す不安感を押し殺すことで，神経衰弱に陥り，身体的には潜在的に交感神経が過緊張状態となっている．メンタル的虚弱と言い換えることができる．

▶ こころのつまずきに早い段階で気づき，漢方的アプローチを加えることにより，救えるこころがたくさん存在すると筆者は考える．その時に活躍する方剤が桂枝加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとうである．こころの脆弱性を救う方剤といえる．

診断エラーから縁蔵を守れ宮上　泰樹 , 近藤　慶太 107巻4号 , 2025年3月 , pp.520-526

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アルツハイマー型認知症患者の易怒性に対するブレクスピプラゾールの有効性岡田　悟 , 谷尾　甚吾 , 西村　正大 107巻4号 , 2025年3月 , pp.528-531

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　認知症患者の認知症の行動と心理症状（behavioral and psychological symptoms of dementia：BPSD）の陽性症状の1つに易怒性，暴言・暴力，攻撃性がある．これらの症状に対する薬物療法は現在，抗認知症薬，抗精神病薬などが中心だが，抗精神病薬は未だ保険適用外であることが難点である．このような状況の中，2024年9月より新たにブレクスピプラゾール（レキサルティ®）が保険適用となった．

せん妄・苦痛緩和のための鎮静宇井　睦人 107巻4号 , 2025年3月 , pp.532-543

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ブックレビュー

理論から攻める合格点の感染症診療 107巻4号 , 2025年3月 , pp.503-503

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目次 107巻4号 , 2025年3月 , pp.411-412

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バックナンバー 107巻4号 , 2025年3月 , pp.413-414

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奥付 107巻4号 , 2025年3月 , pp.546-546

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次号予告 107巻4号 , 2025年3月 , pp.547-547

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治療
107巻4号
(2025年3月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0022-5207 南山堂

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