胆膵Oncology Forum 1巻1号 (2020年12月)

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神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm;NEN)とは,神経内分泌細胞に由来する腫瘍であり,全身のさまざまな臓器に発生するが,特に膵臓・消化管に多い。膵・消化管NENの年間発症人数は人口10万人に3〜5人であり希少疾患といえるが,近年,増加傾向にあるといわれており,またWHO分類の改訂や治療薬の保険承認が続くなど注目を集めている。記念すべき創刊号の座談会では,本領域のエキスパートの先生方にお集まりいただき,NENの診断と治療における現在のトピックと今後の展開について議論いただいた。

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遠位胆道閉塞に対する術前胆道ドレナージ(pre-operative biliary drainage:PBD)として,内視鏡的胆管ステント留置術(endoscopic biliary stenting:EBS)は標準的な処置法として普及し,わが国でも広く行われている1)。わが国では切除可能遠位胆管閉塞による高度黄疸は肝機能低下や易感染性,出血傾向など手術に対する耐術能の問題があり,PBDが行われているのが一般的である。EBSは胆管ステントとしてはプラスチックステント(plastic stent:PS)か,金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)をそれぞれ選択する必要がある。近年,PBDではSEMSが推奨されてきているが,待術期間が施設間により異なる,コストイメージなどの面より実臨床ではPSによりドレナージを行っている施設も依然として多い。本稿ではPSによるPBDについて述べる。

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わが国では胆膵がんによる閉塞性黄疸例に対して術前ドレナージを行うことが一般的である。高度黄疸症例では肝機能低下や易感染性,出血傾向などにより手術に対する耐術能が低下し,周術期の偶発症の増加や全身麻酔の安全を担保できないことなどの理由が挙げられる。また手術待機期間が比較的長いため,より黄疸が増悪し全身状態の悪化をきたすと考えられている。一方,欧米では2010年にvan der Gaagらから術前にドレナージをする群はドレナージをしない群と比較して重篤な偶発症の発生を増加させると報告され1),この結果に基づいて術前ドレナージは推奨されていない。しかしながらこの研究は,①胆道ドレナージの不成功率や手技関連の偶発症の発生率が既報よりも明らかに高いこと,②高度黄疸例(総ビリルビン値 14.6mg/dL以上)が除外されていること,③手術待機期間が非ドレナージ群の平均1.2週間と比較してドレナージ群では平均5.2週間と大きな差があることなどの問題点が指摘されている。またそれ以降,術前の胆道ドレナージにおける多くの研究が報告されているが,術前ドレナージがもたらす患者への利益に一定の見解がないのが現状である。したがって,高度黄疸症例や胆管炎合併例,手術待機期間が長い症例,術前治療を行う症例に関しては,黄疸の増悪による全身状態の悪化を防ぐために術前の胆道ドレナージを行うべきであると考えている。

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従来,閉塞性黄疸を伴う悪性腫瘍に対しては術前に胆道ドレナージを行い,その後手術を行うというのが当然の流れであったが,近年世界的にその必要性について議論がされており,不要とするデータも出ている。しかし本邦では慣習的に胆道ドレナージ後に手術を行っており,昨年出版された膵癌診療ガイドライン2019年版ではBorderline Re-sectable膵がんのみならず,Resectable膵がんに対しても術前化学療法を行うことが提案された1)。胆道がんにおいてはいまだ術前化学療法の明らかなエビデンスはないものの,こういった背景から術前胆道ドレナージは今後も継続して行われるものと考える。胆道ドレナージに使用されるステントには,プラスチックステント(PS)とメタリックステント(SEMS)がある。PSはSEMSより留置が容易,かつ安価であるというメリットがある一方で,SEMSはPSよりも開存期間が長いというメリットがある。悪性腫瘍に対する術前の胆道ドレナージが非切除の悪性腫瘍に対する胆道ドレナージと大きく異なるのは,非切除の場合は恒久的なドレナージを意図したものであるのに対し,術前の場合は一時的なドレナージを意図したものであるという点である。恒久的なドレナージを意図した場合はステントの開存期間が長ければ長いほどよい,という考えが大前提としてあるためSEMSの留置が積極的に行われることが多いが,術前ドレナージの場合は留置期間が限られているためSEMSを使用することが必ずしも必要ではないという考え方も出てくる。また,検討すべき要素として,開存期間のみならずステント留置に伴う合併症の違いや,さらには周術期の合併症発症に与える影響の違いなど術前ドレナージならではの疑問も出てくる。そこで今回の誌上ディベートが企画され,PSによる術前ドレナージを中心に行っている伊藤先生,SEMSによる術前ドレナージを中心に行っている塩見先生,それぞれのエキスパートに解説いただいた。

外科手術手技の実際-コツと工夫-

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肝門部領域胆管がんは根治切除が長期生存をきたす唯一の方法であり,尾状葉切除を含む肝葉切除・肝外胆管切除が標準術式となっている1)2)。肝切除術式として右肝切除または左肝切除を選択することが多いが,病変の進展程度によって右または左三区域切除が適応となる2)。左三区域切除は他の肝切除に比べ離断面積が広く,血管合併切除を施行する症例も多いためその難易度は高く,わが国の報告でも90日死亡率は10%に及ぶ3)。本稿では肝門部胆管領域がんに対する左三区域切除の術前準備,術中の注意点に焦点をあてて解説する。

胆道がん・膵がん-診断・治療Q&A-

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BRCA1/2はDNA二本鎖切断(double strand break:DSB)の修復機構の1つである相同組み換え修復(homologus recombination:HR)に関与する遺伝子である。生殖細胞系列のBRCA変異(germline BRCA mutations:gBRCAm)を有すると,相同組み換え修復異常(HR deficiency:HRD)のため遺伝子変異によるがんの罹患リスクが上昇し,遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC)として知られている。gBRCAmは膵がんの罹患リスクも3.5〜10倍に上昇させると報告されており,また膵がん患者の4〜7%でgBRCAmが指摘されている。胆道がん患者においても3〜5%程度でBRCA変異を有すると報告されている1)2)。腫瘍組織由来の解析でBRCA変異陽性と判明した場合は,その変異が生殖細胞系列または体細胞系列に生じたものであるのか,厳密には鑑別がつかないため,必要に応じて生殖細胞系列の検査を検討する。gBRCAmと判明した場合は,患者本人に乳がん・卵巣がんといった重複がんのリスクがあることに加えて,血縁者にもgBRCAmを有する者がいた場合は,同様にがん罹患リスクを考慮に入れたスクリーニング・発症予防・早期発見といった対応が必要になる。そのため遺伝カウンセリングなどを通して正確なリスク評価や血縁者診断の適応相談などが必要となる。詳細は他稿に譲るが,膵がんについてはまだ確立したスクリーニング方法はなく,国内外ともにエキスパートによるコンセンサスとして超音波内視鏡(EUS)やMRI/MR胆管膵管撮影(MRCP)を用いた定期的なスクリーニングが提案されている。

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第1度近親者に2人以上の膵がんを認める場合,これら膵がんを広義に“家族性膵がん”と呼ぶ。このような膵がんの一部では,分子生物学的あるいは遺伝学的に他の膵がんとは異なる特徴を有する可能性があるため,いくつか注意すべき点が挙げられる。家族性膵がんの1〜2割に遺伝性膵がんが含まれていると報告されている1)2)。その場合には,遺伝子バリアントによって薬剤の奏効性が異なる可能性があり,患者の家族にも膵がんやその他の腫瘍のリスクが高くなることが予測される。膵がんは高率に再発・転移をきたし,比較的短期間で標準治療が効かなくなるがん腫である。最近ではこのような進行期膵がんに対して,抗PD-1抗体の治療適応をみるためのMSI検査やゲノム医療のがん遺伝子パネル検査を行う機会が増えてきた。現在,生殖細胞系列BRCAバリアントを伴う進行膵がんに対するPARP阻害薬(オラパリブ)が国内承認審査中であり,膵がん症例に対するBRACAnalysisの適用にも関心が集まっている。また,保険適用も考慮しながらではあるが,膵がん家系などの膵がん高リスク群に対してサーベイランスが行われるようになってきた。これらを踏まえて,日常診療で家族性膵がんとわかった場合の対応について述べたい。

期待される最新研究

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近年ディープラーニング(深層学習),人工知能やAI(artificial intelligence)という言葉を聞く機会が日常生活でも増えてきた。人間ができないことや時間がかかることを簡単に行うことができ,私たちの生活を便利に変えつつある。ディープラーニングを用いた研究は医療分野でもさまざまに取り組まれており,世界における成長分野の1つであり,医療的価値や商業的価値のある分野であることは間違いない。AIが得意とするのは,「パターン認識」と呼ばれる作業である。パターン認識とは,現代社会に溢れる大量データ,いわゆる「ビッグデータ」を解析し,ここから何らかのパターン(模様,傾向,様式など)を見出す作業である。パターン認識の1例は画像解析(画像認識)である。ごく身近な例で説明すれば,Facebookのようなソーシャル・メディアに時々刻々とアップロードされる写真のような画像をコンピュータ,つまりAIが自動解析し,その画像に何が写っているかを識別する(=ある種のパターンを認識する)作業が画像解析である。AI,ディープラーニングがもつこの画像解析(パターン認識)の能力を医療に使うとすれば,応用事例は「画像診断」である。画像診断とは,患者の患部を撮影したX線写真,あるいはMRIやCTスキャンなどによる断層画像を(少なくとも,これまでは)専門医が目視して,さまざまな病気を診断する作業である。読影ができる専門医が不足している部分でもあり,ここにディープラーニングを導入すれば,こうした画像診断が自動化できると考えられている。がんにおける画像を用いたAIによる役割は多岐にわたり,前述したような実際の診療に応用できるアルゴリズムの開発がなされている1)。実際のがんの診療や研究において要求されているのは,どのように診断するか,どのように予後を予測するか,どのように治療を選択するかなどが肝要となっている(図1)1)。がんの診断に関与する診断モダリティーとして医師が認識するのは,目で認識する画像診断,内視鏡診断である。本稿では腫瘍領域におけるAIの開発を述べるとともに胆膵領域での現状も報告する。

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神経内分泌腫瘍(nueroendocrine neoplasm:NEN)は内分泌細胞や神経細胞から発症する腫瘍の総称である。NENは以前ではカルチノイド(がんもどき)と呼ばれてきたが,2010年のWHO分類により,NENはすべて悪性と定義され,カルチノイドという用語はカルチノイド徴候のみに用いられるようになった。最近,膵神経内分泌腫瘍(panNEN)に対する疫学調査が行われ,わが国の実態も明らかになってきた。PanNENの診断および治療においては,最新のWHO分類2017/2019によるgradingおよび正確な組織診断が重要である。さらに,腫瘍の機能性の有無,進達度,転移の有無を正確に評価し,腫瘍の分化度および悪性度に合わせた治療が必要である。

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目次

奥付

基本情報

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胆膵Oncology Forum
1巻1号 (2020年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:2436-0287 メディカルレビュー社

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