誌上ディベート
胆膵がん術前胆道ステント留置 ②メタリックステントの立場から
塩見 英之
1
,
中野 遼太
2
,
小林 隆
1
,
酒井 新
2
,
増田 充弘
1
,
児玉 裕三
3
1神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学 助教
2神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学
3神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学 教授
pp.15-19
発行日 2020年12月21日
Published Date 2020/12/21
DOI https://doi.org/10.34449/J0118.01.01_0015-0019
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わが国では胆膵がんによる閉塞性黄疸例に対して術前ドレナージを行うことが一般的である。高度黄疸症例では肝機能低下や易感染性,出血傾向などにより手術に対する耐術能が低下し,周術期の偶発症の増加や全身麻酔の安全を担保できないことなどの理由が挙げられる。また手術待機期間が比較的長いため,より黄疸が増悪し全身状態の悪化をきたすと考えられている。一方,欧米では2010年にvan der Gaagらから術前にドレナージをする群はドレナージをしない群と比較して重篤な偶発症の発生を増加させると報告され1),この結果に基づいて術前ドレナージは推奨されていない。しかしながらこの研究は,①胆道ドレナージの不成功率や手技関連の偶発症の発生率が既報よりも明らかに高いこと,②高度黄疸例(総ビリルビン値 14.6mg/dL以上)が除外されていること,③手術待機期間が非ドレナージ群の平均1.2週間と比較してドレナージ群では平均5.2週間と大きな差があることなどの問題点が指摘されている。またそれ以降,術前の胆道ドレナージにおける多くの研究が報告されているが,術前ドレナージがもたらす患者への利益に一定の見解がないのが現状である。したがって,高度黄疸症例や胆管炎合併例,手術待機期間が長い症例,術前治療を行う症例に関しては,黄疸の増悪による全身状態の悪化を防ぐために術前の胆道ドレナージを行うべきであると考えている。
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