誌上ディベート
腹腔洗浄細胞診陽性膵がんの手術適応 ②「手術を行わない」という立場から
中川 圭
1
,
水間 正道
2
,
青木 修一
3
,
有明 恭平
4
,
高舘 達之
5
,
海野 倫明
6
1東北大学大学院消化器外科学 講師
2東北大学大学院消化器外科学 病院講師
3東北大学大学院消化器外科学 特任助教
4東北大学大学院消化器外科学 助教
5東北大学大学院消化器外科学 非常勤講師
6東北大学大学院医学系研究科消化器外科学教授
pp.17-20
発行日 2022年3月31日
Published Date 2022/3/31
DOI https://doi.org/10.34449/J0118.02.02_0017-0020
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通常型膵がん(pancreatic ductal adenocarcinoma:PDAC)の診断・治療はさまざまな臨床研究結果から近年定義やアルゴリズムが改定され,より系統的になった。わが国での「膵癌取扱い規約第7版(増補版)」1)で切除可能性分類が,「膵癌診療ガイドライン2019年版」2)で治療アルゴリズムが明確にされていることは各診療科の医師や患者にとってわかりやすい。手術切除は固形がんにとって根治を得る重要な治療法である。しかし,膵がんにおいては単にがん遺残のないR0切除を達成しても再発をきたさない結果を導くことは容易でなく,切除単独治療の5年生存率はおよそ10%程度と考えられる3)-5)。近年,治療開発によって術後補助化学療法が標準治療となり,切除成績の向上が得られた2)3)6)。さらに,術前補助化学療法も臨床試験でその有用性が証明され7),わが国でもガイドラインに採用されている。周術期化学療法を交えた集学的治療戦略を確立したが,さらなる予後改善に向けてより強力なレジメンを用いた治療開発も進められている。同時に,強力であるが有害事象も危惧されるレジメンの施行を必要とする対象を明らかにすることが重要となる。我々は腹腔洗浄細胞診(CY)陽性症例の切除成績が不良であることに以前から着目しており,治療戦略を検討してきた。
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