胸部外科 73巻6号 (2020年6月)

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現在,痛みの強さを評価するにあたり,患者の主観的判断が直接結果に結びつくフェイススケールやvisual analogue scale(VAS),numerical rating scale(NRS)などの方法が用いられている.しかし,いずれも評価の定量性に問題があり,患者の感じている本当の痛みの強さを知るうえでより客観的に把握する方法の開発が望まれる.われわれはこのような背景から,痛みの強さを数値化してより定量的に評価することを目的に開発された知覚・痛覚定量分析装置[PainVision PS-2100:ニプロ社,大阪(以下,PainVision)]1)(図1)について,呼吸器外科手術後の疼痛評価としてはじめて検討する機会を得たので報告する.

まい・てくにっく

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心房細動に対する外科治療であるmaze手術は効果的であるものの,いくつかのピットフォールがある.Maze手術は両心房に対する切開・アブレーションとともに,肺静脈の隔離,僧帽弁輪,三尖弁輪に対するアブレーションから構成されている.そのうち,成績を維持するためには特に僧帽弁輪への確実なアブレーションが重要である.

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胸骨正中切開を伴う心臓大動脈手術では,術前CT検査を行っており,最近では放射線診断科医による読影がされることも多くなってきている.ときどき,前縦隔の脂肪組織内に小さな腫瘤陰影を見つけることがある.心臓血管外科医や循環器内科医は,心臓大動脈に意識が集中しているため,前縦隔のわずかな異常陰影を見逃したり軽視してしまうことがありうる.しかし,前縦隔腫瘍が小さくても悪性であることがあり,細心の注意を払う必要がある.われわれは,胸骨正中切開を伴う心臓大動脈手術で,術前CTで前縦隔腫瘤を認めた症例を検討した.

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心臓手術後に血胸となる症例は非常にまれで,また,心臓手術後に気管支動脈から出血して血胸となった報告例はない.われわれは, Stanford A型急性大動脈解離術後に気管支動脈からの肺出血を合併し,コイル塞栓術と胸腔鏡補助下止血術の併用が有効であった1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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片側性肺水腫は,典型的には大量の胸水貯留や気胸による虚脱肺をドレナージにより急速に再膨張させる際に発生する1).近年,右開胸による低侵襲心臓手術(MICS)の際においても片側性肺水腫が発生する場合があるとされ,その発生機序は明らかではないが,合併症や死亡率の増加に関係すると報告されている2~4).胸骨縦切開による心臓手術における片側性肺水腫の発生に関してはこれまで注目されておらず5),発生頻度や予後は不明である.われわれは,胸骨縦切開による大動脈弁置換術において片側性肺水腫を経験したので,発生機序や予後について若干の文献的考察を加え報告する.

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両側同時性気胸はしばしば経験される.多くは両側同時性の肺囊胞の破裂が原因であり,胸腔間交通によるものはまれである.われわれは,食道癌術後の両側同時性気胸の1例を経験したので報告する.

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孤立性線維性腫瘍(SFT)は間葉系細胞から発生するまれな腫瘍である.予後は良好な腫瘍であるが,まれに再発を認める場合がある.われわれは,低血糖発作を契機に発見された右胸腔を占拠する巨大SFTに対し手術を行い,低血糖発作は消失したが,経過観察中に同側胸膜播種を認め,2回手術を行うも最終的に対側肺転移を認め,再発巣の増大に伴い低血糖も再燃した症例を経験したため報告する.

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肺癌の外科治療において,手術を契機として偶発的に他臓器の不顕性癌が見つかることがある.われわれは肺癌手術時に上縦隔リンパ節転移で発見された不顕性甲状腺癌の1例を経験したので報告する.

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患者は70歳・男性で,右上葉に22 mmの腺癌が存在した.気管分岐部リンパ節が腫大し,超音波気管支鏡(EBUS)で組織学的に転移と診断された.取り囲むように腫大した右肺門リンパ節のため,中間気管支幹が全長にわたり狭窄していた.導入化学放射線療法後,2013年に右肺全摘出術を実施した(図1~4).無再発で元気に術後7年を迎えようとしている.

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はじめに 心肺蘇生時の圧迫による胸骨骨折断端が原因で発症する心臓損傷はまれであり,剖検症例報告で散見されるのみである.われわれは,前述の機序による右室損傷症例を経験したので報告する.

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はじめに 成人における右室二腔症(DCRV)の症例はまれながらもいくつかの報告が散見される.本邦における成人症例において,手術でのアプローチ方法が明記されている報告のほとんどが右室切開によるものであった.なかには右室切開に伴い,術後不整脈や右室障害の要因となった症例もある.

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はじめに 右鎖骨下動脈起始異常は左大動脈弓の約0.5%にみられると報告1,2)されている.起始部は瘤化してKommerell憩室を形成することが多い.われわれは,有症状の右鎖骨下動脈起始異常に対し,オープンステントグラフト併用全弓部大動脈人工血管置換術を施行した1例を経験したので報告する.

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はじめに 急性大動脈解離と真性腹部大動脈瘤(AAA)は異所性に合併することが多い1).一方,急性大動脈解離がAAAに及んだ症例ではAAA破裂の危険性が高く,術式,手術方針,手術時期などが問題となる1,2).われわれは,最大径72 mmのAAAに及んだStanford B型急性大動脈解離に対して,大動脈解離発症20日目に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)と腹部大動脈人工血管置換術を同時施行し,良好な経過が得られたので報告する.

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はじめに 胸部大動脈手術におけるelephant trunk(ET)法は,1983年にBorstら1)により報告されて以降,広く汎用されている.ET法の合併症として,長いETによる脊髄虚血などの報告があるが,短いETによる合併症の報告はまれである.われわれは,急性大動脈解離術後に短いETの影響で遠隔期遠位弓部大動脈の急速拡大および大動脈気管支瘻を生じた症例を経験した.

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はじめに 遠位弓部大動脈瘤の治療は開胸による人工血管置換術が第一選択であるが,症例によっては血管内治療も考慮される.われわれは,腕頭動脈と左総頸動脈が共通幹を形成するbovine arch(BA)と左椎骨動脈大動脈起始(ILVA)の二つの弓部大動脈分枝異常(破格)を伴う遠位弓部大動脈瘤に対し,カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステム(川澄化学工業社,東京:以下,Najuta)を使用し良好な結果を得たので報告する.

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はじめに 乳び胸は胸管あるいはその分枝を損傷することで発症するため,肺癌手術時のリンパ節郭清の後には一定の頻度で起こりうる.われわれは,肺癌術後乳び胸に対しリンパ管造影が効果的であったと思われる1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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はじめに 菌状息肉症は皮膚原発のT細胞リンパ腫である.われわれは,菌状息肉症を合併した胸腺腫の1切除例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する.

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はじめに 悪性線維性組織球腫(MFH)は,中高年の四肢に好発し予後不良で,胸壁発生および長期生存例はまれである.最大径7 cmの多形型胸壁原発MFHに対し,手術と胸腔内温熱療法,化学放射線療法を行った結果,良好な経過を得ている1例を経験したので,文献的検討を加えて報告する.

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はじめに 膵性胸水は,膵炎に伴って胸腔内に貯留した膵酵素を多量に含む浸出液と定義される1).われわれは,多量の左胸水により縦隔偏位をきたし,精査で慢性膵炎による膵性胸水と考えられた症例を経験したので報告する.

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私たちはみな,最初は「駆け出し」であった.誰もが活躍したいと願ってスタートをきるわけだが,新参者に憧れの主役が早々に巡ってくるわけもない.当分の間,任せてもらえるのは脇役,つまり心臓外科手術でいえば,大腿動脈の剝離とか大伏在静脈採取といった基本手技になる.ところが,特に一般外科研修である程度の実力をつけたつもりでいると,これらはとても容易で退屈に思え,あまり興味も湧かず,我流だとか見よう見まねになりがちである.もちろん,それでも問題が起きないことのほうが多いが,グラフト損傷や術後トラブルを生じ,はじめて顔色を失いつつ成書を繙いてみると,中心的でない手技のことを詳述している書物が意外に少ないことに気づくものである.しかし基本手技について教授・部長クラスに教えを乞うのは随分時代がかわったとはいっても畏れ多く,それでは,とすぐ上の先輩に尋ねてみると,なんと同じように見よう見まね,まるで外科手技の“do処方”のようであったりする.しかし基本手技についても,原理原則を少なくとも一度はきっちりと学んでおくべきである.

胸部外科医の散歩道

雑感 金子 公一
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駅に続く道で街路樹の河津桜の花芽が膨らみ,いつの間にか開花して道が一気に明るくなり,春が間近なことを感じる.今年は暖冬で,降雪がなくて営業できないスキー場がある一方で,冬季は閉鎖されるゴルフ場が営業していたりと,異常な気候であった.昨年は繰り返す自然災害も目の当たりにしており,地球規模の気象の変化が身近で目に見えるようになってきた.

基本情報

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胸部外科
73巻6号 (2020年6月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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