胸部外科 71巻12号 (2018年11月)

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SOLO SMART弁(SOLO弁)[LivaNova社,London](図1a)は,2016年から本邦で保険償還された新しいステントレス生体弁である1,2).ステントレス生体弁は有効弁口面積(EOA)が大きいため,prosthesis-patient mismatch(PPM)のリスクが高い高齢者の狭小弁輪を伴う大動脈弁狭窄症(AS)への有用性が期待される.SOLO弁による大動脈弁置換術(AVR)は,弁輪上部のValsalva洞壁に連続縫合で縫着するため,弁輪部縫着のAVRとは異なる手術手技が特徴的である.われわれは,SOLO弁をAS例のAVRに使用するのみならず,弁輪部膿瘍を伴った活動期の感染性心内膜炎(IE)や再AVRの症例にも応用した.SOLO弁を使用したAVRの初期成績と適応に関する考察を併せて報告する.

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近年,胸部ステントグラフト挿入術(TEVAR)の適応拡大により,Stanford B型急性大動脈解離(Stanford type B acute aortic dissection:BAD)に対する積極的な外科治療は,左開胸直達手術よりもTEVAR治療が多く報告されている.しかし,特に急性期における外科治療は,脳梗塞や脊髄梗塞,逆行性A型解離併発など重篤な合併症が問題となることもあり,保存的治療に抵抗性がある症例に限定して行われることが多い.われわれは,BADに対して保存的治療が有効でなく,初回入院中にfrozen elephant trunk(FET)を用いた胸骨正中切開下上行弓部置換術(J-Graft FROZENIX:日本ライフライン社,東京)を施行した症例を検討した.BADの外科治療として有効な治療方法であると思われたので,治療経験を報告する.

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特発性血気胸は,急性期の疾患を取り扱う救急外来においても遭遇することの少ない疾患であるが,発症早期に血胸の所見が乏しくても,その後血胸の急性増悪により緊急手術が必要となる症例がしばしばある.所見が乏しい発症早期においても,緊急手術となる症例を見極めるために早期より血胸の評価をすることが重要と考えられ,発症早期に血胸の所見が乏しい症例を中心に,自験例についてその背景などを検討することとした.

まい・てくにっく

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S7区域切除は下肺静脈に接するが,瘢痕性癒着などがなければ剝離は特に困難ではない.通常の区域気管支・肺動脈が腹側にあるタイプ(7a型)は,葉間面のA7とB7を処理し,総肺底静脈にS7から流入する肺静脈分枝を適宜止血しつつ切離し,区域間を切開する1).区域間の面積に比して切除実質の深さが浅いため,切除側含気法がより適している.

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高齢化や生活習慣病による動脈硬化性大動脈弁狭窄症(AS)が増加している.手術に際し,高度に石灰化した上行大動脈に対する鉗子遮断は脳合併症の原因となる.これを回避するため大動脈遮断方法を工夫し,安全に大動脈弁置換術(AVR)を施行したので報告する.

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気管支動脈瘤はまれな疾患であり,破裂すると致死的出血となるため,大きさにかかわらず診断次第,外科的治療もしくは血管内治療が行われる.近年では低侵襲性から血管内治療が第一選択となり気管支動脈塞栓術が広く行われているが,再疎通や塞栓完遂性の問題がある.われわれは,気管支動脈瘤に対して気管支動脈塞栓術および胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)が有用であった症例を経験したので報告する.

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冠状動脈瘤は比較的まれな疾患である.通常無症状であり,心エコーやCT,冠状動脈造影(CAG)時に偶然発見されることが多い.破裂したり冠状動脈末梢への血栓閉塞を起こしたりすると,心タンポナーデや急性冠症候群(ACS)を発症する.

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粘膜関連濾胞辺縁帯リンパ腫(extranodal marginal zone lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue type:MALTリンパ腫)は,先行する感染症や自己免疫疾患との合併が多くみられる比較的まれな腫瘍である.われわれは,先行する原発性肺癌に合併してMALTリンパ腫の発症が疑われた1例を経験したので報告する.

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特発性声門下狭窄症(idiopathic subglottic stenosis:ISS)は気管挿管歴などの原因なく生じる比較的まれな疾患である.病因は依然として不明であり,治療方針もいまだ確立されていない.

1枚のシェーマ

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34歳の男性である.頻発する心室頻拍(VT)に対して過去2回カテーテルアブレーションを施行されていたが,再発かつ難治性のため紹介された.術前および術中のマッピングで左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCX)の起始部,前室間静脈(AIV)に囲まれた左室高位側壁に頻拍起源を認め,LV summit VT と診断した.

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はじめに 化膿性心外膜炎による心タンポナーデで緊急入院し,経過中に感染性と考えられる胸部大動脈瘤にいたった1例を経験した.感染性胸部大動脈瘤に対する胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)の意義についても考察を加えて報告する.

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はじめに 大動脈弁交連部の剝離(avulsion of aortic valve commissure:AAV)は交通外傷や感染により生じるが,比較的まれな病態である1~3).また,二尖弁(bicuspid aortic valve:BAV)は感染性心内膜炎(IE)の危険性が高くなることが報告されている4).われわれは,IEを原因としてAAVを生じ,大動脈基部仮性瘤を発症した1例を経験したので報告する.

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はじめに もやもや病(MMD)は,内頸動脈の進行性閉塞により形成される側副血行路の血管造影所見から命名された脳血管疾患であり,脳梗塞や脳出血の原因となる難病である1~3).われわれは,二度の脳出血既往と局所的な脳虚血を有するMMDを合併した,解離性上行大動脈瘤の症例を経験したので報告する.

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はじめに 冠状動脈瘤はまれな疾患で,外科治療に関する明確なコンセンサスはない.われわれは左主幹部(LMCA)冠状動脈瘤に重症3枝病変を伴った症例に対し,心拍動(off-pump)下に瘤縫縮術と4枝冠状動脈バイパス術(CABG)を行った症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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はじめに 右冠状動脈(RCA)が左Valsalva洞から起始するRCA起始異常(AAORCA)はまれな冠状動脈奇形であるが1),RCAが大動脈(Ao)と肺動脈(PA)間を走行する場合は若年者の突然死の原因となるため,治療を要する2~4).われわれが経験した,AAORCAが原因であった狭心症に対する手術例を報告する.

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はじめに Bland-White-Garland (BWG)症候群として知られる左冠状動脈肺動脈起始症は,まれな先天性冠状動脈異常症である.乳児期の突然死や心不全を発症することが知られているが,右冠状動脈から左冠状動脈への側副血行路により成人まで無症状で経過する症例もある.小児期の左冠状動脈肺動脈起始症に対してはtranslocation法1)やTakeuchi法2)などが行われ,成人例に対しては冠状動脈バイパス術が用いられることもある3).われわれは,成人左冠状動脈肺動脈起始症に対し,大動脈-冠状動脈主幹部(LMT)に人工血管を間置した症例を経験したので報告する.

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はじめに 肺癌手術において温蒸留水による胸腔内洗浄は腫瘍細胞の播種を防ぐなどの目的で行われている.しかしながら,その効果についてはさまざまな議論があり,副作用に関しても十分な検討がなされていないのが現状である.われわれは,術中温蒸留水による胸腔内洗浄時に一過性に心電図ST上昇を認めた1例を経験したので報告する.

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はじめに 肺癌術後の乳び胸の多くは術直後に経験し,遅発性に発生することはまれである.われわれは右上葉切除から50日後に生じた遅発性乳び胸の1例を経験したので報告する.

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はじめに 肺癌に対する積極的縮小手術の術後断端再発は,外科医にとって危惧すべき再発形式の一つである.肺切除後のステープルラインに腫瘤性病変の出現を認めた場合,炎症性肉芽腫や感染よりも,まず断端再発を念頭におくのが一般的である.われわれは肺癌術後の区域切除断端に発生した肺非結核性抗酸菌症の1例を経験したので報告する.

連載 行ってきました! 海外留学 (第50回)

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筆者は2012年2月~2017年6月の約5年半,海外留学をする機会を得た.最初の2年半はピッツバーグ大学で研究を,後の3年間はテンプル大学で臨床を行った.留学期間中に心臓外科医として,また一人の人間として多くを学ぶ機会を得て成長できたと感じる.海外留学が敬遠される風潮にあって,海外に挑戦する若手外科医の参考になればと思い,寄稿させていただく.

胸部外科医の散歩道

腫瘍外科と臨床病理 坪田 紀明
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一般に,切除標本がなければ臨床病理(以下,病理)は成り立たず,病理がなければ腫瘍の外科は前に進めない.両者は手術の「動」と検鏡の「静」という対極の世界にありながら,互いに相手を必要とする密接な関係にある.

基本情報

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胸部外科
71巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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