発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015140385
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51歳女。家族と口論になったとき自分で包丁を胸部に突き刺し、救急車で搬送された。血圧70/45mmHgとプレショック状態で、左胸部に突き刺さった包丁から心拍動が感じられたため、刃先が心臓に到達している可能もあると考え、まず人工心肺を確立したうえで胸骨正中切開を行った。動脈性の出血を認めたが、主要な冠状動脈には損傷を認めず、分枝からの出血と考えられた。心損傷は表層のみであったため、直接縫合により修復できた。肺の損傷は、包丁が左肺舌区を貫通しており、刺入部・刺出部とも自然止血していたため、3-0ポリプロピレン糸で縫合止血を行い、閉胸した。しかし、術直後の胸部X線で左肺の含気が認められず、さらに気管チューブから大量の血液が持続的に吸引されるようになった。包丁貫通部からの再出血が疑われたため、胸腔鏡補助下に左肺舌区切除術を行った。その後の経過は概ね良好で、術後36日目に独歩で退院した。損傷部から再出血した原因については、人工心肺施行時に用いたヘパリンによるものと考えられた。
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