胸部外科 71巻11号 (2018年10月)

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有瘻性膿胸の外科治療として大網充塡術が有効と報告されている1).しかし栄養状態が悪化した症例では十分な容量の大網が期待できない.このような症例ではしばしば十分な栄養の経口摂取が困難である.われわれは,有瘻性膿胸の治療過程において経皮内視鏡的胃瘻造設(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)による積極的栄養管理を行い,その後に有茎性大網充塡術を行うことができた症例を経験したので報告する.

まい・てくにっく

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変性性僧帽弁閉鎖不全では,腱索断裂や延長だけでなく弁尖の高さや幅が延長している症例が多い.SAMは心室中隔弁接合間距離(C-sept)が短く,かつ接合線以下の前尖組織が過剰な場合に,その部位が左室流出路に引き込まれて起こる.心停止下の水テストは静的な状態確認であり,心臓が拍出し始めて現れるSAM現象を予測できない.水テストでみえているのは左房側からみえる僧帽弁のみで弁接合線以下はみえない.形成術ではこの盲点を補う工夫が必要となる.

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僧帽弁形成術での人工腱索長の決定は,弁の接合や予後にかかわる重要な問題である.さまざまな方法が提案されているものの,的確な腱索長の決定はむずかしく,技術的にも挑戦的な手技の一面をもつ1,2).われわれは,糸結びの単結紮での縫合糸のロックを利用した,簡易な人工腱索長の調整法を考案したので報告する.

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鎖骨下動脈瘤は末梢動脈瘤の中でもまれな疾患であり1,2),外科的治療に関してはその原因や発生部位によって手術アプローチが異なるため検討が必要である.また,鎖骨下動脈瘤はほかの動脈瘤を合併する率が33~47%と比較的高く3,4),特に右鎖骨下動脈瘤に弓部大動脈瘤を合併する場合,一期的外科治療の際には両側反回神経麻痺の危険がある.われわれは右鎖骨下動脈瘤を合併した弓部大動脈瘤に対してハイブリッド治療を行い,良好な結果を得られた症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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心臓血管手術後の縦隔炎は,ひとたび発症すると生命予後の悪化や,入院期間延長,医療コストの増加など悪影響が大きく,多くの施設でCenters for Disease Control and Prevention(CDC)ガイドライン1)などに基づいた発症予防策がとられている.しかし開心術全体の数%に発症するとされ2,3),これまでにもさまざまな治療法が報告されてきた4~6).当院での治療方法の工夫と今後の課題について検討した.

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小児期,特に新生児期における心外膜リード植込みは,リード選択,ジェネレータ選択,植込み部位など症例に応じた治療を要する.新生児では皮下組織,筋層が菲薄であり,皮膚潰瘍や腹腔内への脱落などによる合併症も報告されている3~7).われわれは,腹直筋下に植込みを行った後腹腔内へ脱落し,回収と再固定を要した1例を経験したので報告する.

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植込み型補助人工心臓(implantable ventricular assist device:iVAD)に関連して合併する術創部感染は,ドライブライン感染やポンプポケット感染を引き起こして重篤な経過をたどる.われわれは拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)で体外式補助人工心臓(extracorporeal VAD:eVAD)を装着してから心移植待機登録をして,iVADへの植替え手術(bridge-to-bridge:BTB)によりHeartMateⅡ(Abbott Laboratories社,Chicago)を植込んだ2例において,デバイス感染対策として大網充塡術を行って良好な結果を得たので報告する.

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本邦でも,高齢で合併症を伴う大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)が普及してきた.TAVR後の感染性心内膜炎(IE)は比較的まれであるが,発症すると高い死亡率が報告されており,重篤な合併症である.われわれはTAVR後に発症したIEに対し,生体弁による大動脈弁置換術(AVR)を含む外科的心内修復術を行った症例を経験したので報告する.

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原発性心臓腫瘍は全腫瘍の中で剖検例の0.02~0.04%程度のまれな疾患1,2)である.その大半を占めるのは粘液腫や乳頭状線維弾性腫などの良性腫瘍ではあるが,重篤な合併症をきたす可能性があり,早期の外科的摘出が肝要である3).われわれは,狭心症精査中に発見された乳頭状線維弾性腫を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する.

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乳頭状線維弾性腫は,粘液腫に次いで2番目に多い心臓良性腫瘍である1).その多くは弁葉や弁輪などの弁組織に発生し,心腔内に発生するものはまれである2,3).われわれは,可動性を有する左室心尖部の乳頭状線維弾性腫に対する皮膚小切開下の右肋間開胸,いわゆる低侵襲心臓手術(MICS)による腫瘍摘出術を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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両側巨大肺囊胞に遭遇した場合,アプローチを含め一期的か二期的か,二期的とすれば左右どちらから手術を行うか判断に迷う場合がある.われわれは左右どちらから手術を行うか選択に苦慮し,静脈脱血-静脈送血の体外式膜型人工肺(veno-venous extracorporeal membrane oxygenation:V-V ECMO)を併用することで非進行側の手術を先行した両側巨大肺囊胞例を経験し,良好な結果を得たので,文献的考察を加えて報告する.

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免疫チェックポイント阻害薬であるnivolumabは,非小細胞肺癌の治療薬として承認されてから使用頻度が増加している.われわれは肺腺扁平上皮癌の術後再発に対してnivolumabを使用して効果を認めていたが,小腸転移からの出血のためnivolumabの継続が困難となった1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

1枚のシェーマ

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Grunenwaldらにより肺尖部肺癌に対するtransmanubrial osteomuscular sparing approachが報告されたのは1997年であるが1),当施設で最初にこのアプローチを適用したのは2008年の本例であったようである.この方法では,胸骨柄をコの字に切断するとともに,第1肋骨を前方で切断する.術側の胸骨柄と鎖骨頭を一塊として頭側・外側へ牽引しながら,鎖骨に沿ってその尾側で大胸筋を切離していくと,図1に示すように第1肋骨,鎖骨下動静脈ならびに腕神経叢が術野に露出する.これ以後,腕神経叢由来の悪性神経腫,縦隔腫瘍2)などを含め8例で本アプローチを経験したが,いずれの症例でも良好な術野展開を得ることができた.

連載 行ってきました! 海外留学 (第49回)

タイ ランパーン病院 山邉 健太朗
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筆者は慶應義塾大学医学部外科学教室で1年間を研修医として過ごした後,日本鋼管病院,川崎市立川崎病院で一般外科レジデントとして勤務し,その後医師4年目から心臓血管外科医の修練を開始した.大学医局のいくつかの関連施設で,半年~1年間の臨床経験を積み,2016年4月~2017年3月の1年間,タイへ臨床留学をする機会を得た.12ヵ月のうち,5ヵ月はタイ北部チェンマイ県にあるチェンマイ大学医学部附属病院(MNH)に,7ヵ月はその南東に位置するランパーン県のランパーン病院にクリニカルフェローとして勤務した.

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はじめに 急性心筋梗塞後に合併する心室中隔穿孔(VSP)の急性期手術成績は不良である.また心臓術後の急性呼吸促迫症候群(ARDS)は致命的な合併症である.発症後亜急性期にVSPに対する手術を行い,術後重症のARDSを合併したが,集中治療で救命できた症例を経験したので報告する.

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はじめに 大動脈弁閉鎖不全(AR)を伴う大動脈基部拡大に対する術式として,1968年にBentall手術が発表された1).その後種々の変法2~4)が発表され,それぞれの遠隔期合併症に関する報告が散見されるようになった.われわれはBentall手術変法の一つであるCabrol手術後28年目に右冠状動脈(RCA)へのグラフト内狭窄をきたした1例を経験したので報告する.

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はじめに 心筋梗塞後の左室偽性仮性心室瘤は,1981年にStewartらによって最初に報告されたまれな疾患である1).発症機序は心筋梗塞後の仮性心室瘤と同様に梗塞部位の心筋断裂によるが,仮性心室瘤は心筋断裂が全層に及び,血腫が心外膜にまで到達して心外膜と心囊膜の癒着で瘤が形成されるのに対して,偽性仮性心室瘤は心筋断裂が全層に達することなく心筋壁内に血腫を形成し,同部に左室圧が加わることで瘤が形成される1,2).瘤壁の病理所見では,真性瘤は心筋組織を含み心内膜の連続性が保たれているのに対し,仮性瘤は心膜,心外膜組織のみで心筋組織を欠くものと定義され,偽性仮性瘤は心筋組織が一部残存するものと定義されている1).われわれは無症状で経過した偽性仮性心室瘤を経験したので報告する.

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はじめに 乳頭状線維弾性腫(papillary fibro­elastoma:PFE)は心腔内のさまざまな部位に発生する良性腫瘍であり,弁発生が主である.なかでも大動脈弁および僧帽弁での発生が多く,肺動脈弁での発生はまれである.われわれは肺動脈弁に発生したPFEに対し外科的治療を施行したので報告する.

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はじめに 開心術後に胸骨横切開部の偽関節を呈し,外科的治療を行った症例を経験したので報告する.

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はじめに 炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(in­flammatory myofibroblastic tumor:IMT)は,炎症性偽腫瘍のサブグループの一つで,リンパ球や形質細胞などの炎症性細胞の著明な浸潤を伴う,筋線維芽細胞の増殖からなる腫瘍性病変である.われわれはまれな肺IMT例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに 肺良性腫瘍は肺腫瘍全体の2~5%を占める1).そのほとんどは肺過誤腫であり,肺軟骨腫の頻度はまれである2).われわれは肺軟骨腫の症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

胸部外科医の散歩道

自転車と私 森川 利昭
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元来運動神経のあまりない私にとって,自転車は一番好きな体を動かす手段である.初めて自転車に乗ったのは小学校に上がるころだったので,もう60年ほど乗っていることになる.カッコよいスポーツタイプは前傾姿勢がキツいので,乗るのはもっぱら普通のいわゆるママチャリタイプである.

基本情報

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胸部外科
71巻11号 (2018年10月)
電子版ISSN:2432-9436 印刷版ISSN:0021-5252 南江堂

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