呼吸器ジャーナル 72巻1号 (2024年2月発行)

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特集　膠原病肺—呼吸器内科とリウマチ膠原病内科，見えている景色はどう違うか？

序文

膠原病肺—呼吸器内科とリウマチ膠原病内科，見えている景色はどう違うか？宮本　篤 72巻1号 , 2024年2月 , pp.6-7

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　「膠原病肺」の定義は何か？　様々な膠原病に合併する肺疾患でそれぞれの膠原病に固有のもの，という定義が一般的であろうか．当然のことながら，「膠原病」は多くの疾患を含む疾患群である．肺病変を合併しやすい膠原病とそうではない膠原病があるので，日常的に目にする膠原病肺の種類は限られる．しかし，膠原病肺が疾患群であって，単一の疾患単位を示す言葉ではないことは自明である．それでも，多くの成書で「膠原病肺」という項目は，過敏性肺炎などの疾患とともに同列に並んでいる．英文のreview論文でもinterstitial lung diseases in connective tissue diseasesなどと膠原病肺を包括的に扱うものが存在する．例えばリウマチ肺は「関節リウマチに合併する肺病変」を指すのであって，関節リウマチと異なる疾患を指しているわけでもないから，包括的理解が必要である．

　呼吸器内科医の目の前に現れるのは，呼吸困難をはじめとする自覚症状があるか，胸部画像診断で病変を認める膠原病の患者さんである．一方，膠原病と診断されるすべての患者さんに肺病変があるわけではない．一般に呼吸器内科医は生命臓器である肺病変の診断治療に注力するが，膠原病全体を捉えることが苦手である．一方，リウマチ膠原病内科医は疾患全体の病勢コントロールや様々な合併症治療の専門家であり，肺病変に興味をもっていただいている方がおられるが少数で，一般的に肺病変の治療に苦手意識がある方が多いのではないか？　膠原病のコントロールがうまくいかないと患者さんのQOLは悪くなり，肺以外の臓器障害を招くかもしれない．肺疾患のコントロールが不良であると致命的な状態になる可能性がある．現在，お互いの得意分野が診療科連携という形で活かされる体制が求められていると考える．

Ⅰ．総論

膠原病におけるPF-ILDおよびIPAFの概念と治療戦略山内　浩義 72巻1号 , 2024年2月 , pp.8-16

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POINT

●膠原病には肺病変を伴う頻度が高く，特に間質性肺炎の合併は予後に大きな影響を与える．

●「膠原病らしい所見＋間質性肺炎」の患者に対して，呼吸器内科医と膠原病内科医との診療連携が重要である．

●進行性線維化を伴う間質性肺疾患（PF-ILD）には抗線維化薬が治療選択肢となる．

慢性間質性肺炎を呈する膠原病の急性増悪の診断と治療新井　徹 72巻1号 , 2024年2月 , pp.18-27

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POINT

●急性増悪は特発性肺線維症において提唱された概念であるが，膠原病肺でも認める．

●胸部CTでは慢性線維化所見に加え，新たなすりガラス様陰影，浸潤陰影を呈する．

●原因不明の特発性と，感染，薬剤，誤嚥など原因が推定される急性増悪に分類される．

膠原病に合併する肺高血圧症の診断と治療田中　健介 72巻1号 , 2024年2月 , pp.29-36

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POINT

●CTDにPHを合併した際の予後はIPAH/HPAHに比較して悪く，早期発見・介入が重要である．

●CTD-PHは，non SSc-PHとSSc-PHで病態やスクリーニング，治療方針，予後が異なる．

●ILDを合併したCTD-PHの治療では，PHを構成する病態の把握と原疾患の治療が重要であり優先される．

Ⅱ．各論　［A．関節リウマチ］

関節リウマチ—呼吸器内科医の視点から（1）山川　英晃 72巻1号 , 2024年2月 , pp.37-47

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POINT

●関節リウマチ（RA）患者に間質性肺炎を合併した際，予後を不良にし得る．

●関節炎の活動性が強ければ，間質性肺炎の重症度を判断し，抗RA薬によるベネフィットとデメリット（有害事象）のリスクを天秤にかけて，個々の患者に適切な抗RA薬を膠原病科医と議論し提案し，関節炎の活動性を制御しなければならない．関節炎の活動性の不十分なコントロールは，間質性肺炎そのものの悪化や感染症を引き起こすリスクを高めるためである．

●原疾患（間質性肺炎），薬剤性肺障害，感染症が病態として共存あるいは連続しやすく，しかし治療はしばしば排他的であることから，他の鑑別疾患の可能性を捨てずに初期診断が正しいかを常に振り返りながら，診療にあたる必要がある．

●HRCT所見を軸に，抗炎症薬の変更や強化，抗線維化薬の導入を検討すべきである．

関節リウマチ—呼吸器内科医の視点から（2）—特に肺合併症について山野　泰彦 72巻1号 , 2024年2月 , pp.48-55

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POINT

●肺疾患合併の存在は，合併症や予後，RA治療とも関わるため，肺病変の存在を早期に認識することがまず重要である．

●RAに伴う肺疾患の代表は気管支拡張症，間質性肺疾患であり，自己抗体陽性や，RA自体の疾患活動性との関与が示唆されている．

●肺感染症は悪性渦巻モデルで示唆されるように，肺病変の進行にも関与しうる．ただし感染症のある患者でも疾患活動性の制御の重要性が示唆されており，リスクを鑑みながら疾患活動性の制御を目指す姿勢が重要である．

関節リウマチ—膠原病内科医の視点から秋山　光浩 , 金子　祐子 72巻1号 , 2024年2月 , pp.56-62

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POINT

●間質性肺疾患の合併は関節リウマチの予後と治療選択に影響する．

●間質性肺疾患を合併した関節リウマチでは，関節炎の制御が予後を改善する．

●間質性肺疾患を合併した関節リウマチでは，抗線維化薬が有効である．

Ⅱ．各論　［B．強皮症］

強皮症—呼吸器内科医の視点から加瀬　一政 , 渡辺　知志 72巻1号 , 2024年2月 , pp.63-68

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POINT

●強皮症において間質性肺炎は主要な合併症であり，重大な予後因子である．

●胸部CTと呼吸機能を基にした重症度・進行リスク評価とモニタリングが重要である．

●進行リスクの高い症例に対し，免疫抑制薬や抗線維化薬の導入を検討する必要がある．

強皮症—膠原病内科医の視点から長谷川　詠子 72巻1号 , 2024年2月 , pp.69-75

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POINT

●全身性強皮症は，現在においても難治性で予後不良の膠原病である．

●新規の分類基準は血管障害や自己抗体の項目が加えられ，早期診断を可能とした．

●早期診断，早期治療により予後の改善が期待される．

Ⅱ．各論　［C．皮膚筋炎・多発筋炎・抗ARS抗体症候群］

炎症性筋炎症候群—呼吸器内科医の視点から早稲田　優子 72巻1号 , 2024年2月 , pp.76-85

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POINT

●抗合成酵素症候群は抗炎症薬の組み合わせで軽快するが，再発もしやすい．

●抗MDA5抗体陽性間質性肺疾患は急速進行するものを見逃さないことが必要．

●間質性肺疾患以外の筋炎症状が目立たないものもあり，画像で疑えるようになること．

炎症性筋疾患—膠原病内科医の視点から五野　貴久 72巻1号 , 2024年2月 , pp.86-92

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POINT

●炎症性筋疾患は，骨格筋の他，肺，心臓，消化管にも障害を来す全身性炎症性疾患である．

●筋炎特異的自己抗体は，予後予測に有用であるが，同自己抗体群内で病状の多様性がある．

●グルココルチコイドの積算投与量を可能な限り減らすことが重要である．

Ⅱ．各論　［D．顕微鏡的多発血管炎］

ANCA関連血管炎—呼吸器内科医の視点から北村　英也 72巻1号 , 2024年2月 , pp.93-100

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POINT

●日常臨床で血管炎を疑ったら，発症していなくてもANCA値測定や尿検査を行い，経過を追跡することは非常に重要である．

●予後に関わるため，間質性肺炎の合併やびまん性肺胞出血の合併に注意する．

●血管炎を疑った症例においては，臨床所見（腎臓，皮膚，神経症状など）や画像，血液・尿検査を評価したうえで専門科にコンサルテーションを行う．

ANCA関連血管炎—膠原病内科医の視点から田巻　弘道 72巻1号 , 2024年2月 , pp.101-110

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POINT

●顕微鏡的多発血管炎の診断の際には，肺と腎臓の検索は必須である．

●UIPパターンのANCA陽性の間質性肺炎やANCA関連血管炎に伴う間質性肺炎は予後が悪い．

●疫学的データからは，間質性肺炎を伴うANCA関連血管炎では，間質性肺炎は間質性肺炎としての血管炎は血管炎としての振る舞いをする．

Ⅱ．各論　［E．全身性エリテマトーデス（SLE）・混合性結合組織病（MCTD）］

全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病—呼吸器内科医の視点から榎本　紀之 72巻1号 , 2024年2月 , pp.112-121

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POINT

●SLEにおけるILDの合併率は1〜4%と低値であるが，高齢，長期間のSLE罹患歴，Sjögren症候群の合併例などにはILD合併率が高い．

●SLE-ILD症例において現在の喫煙，血小板減少，HRCTにおける肺病変の拡がり，神経精神病変の合併などが有意な予後不良因子である．

●MCTDにおけるILD合併率は35〜78%と高率である．

全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病—膠原病内科医の視点から磯島　咲子 72巻1号 , 2024年2月 , pp.122-127

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POINT

●SLEもMCTDも抗核抗体が陽性となる代表的な膠原病である．

●どの臓器がどの程度傷害されているかで治療方針が異なる．

●ステロイドによる副作用を軽減するため，免疫抑制剤をうまく使用していく．

Ⅱ．各論　［F．Sjögren症候群］

Sjögren症候群—呼吸器内科医の視点から根井　雄一郎 72巻1号 , 2024年2月 , pp.128-135

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POINT

●Sjögren症候群は一次性・二次性が存在し，肺病変は多岐にわたる．特に二次性のものは併存疾患による間質性肺炎の特徴を有する場合がある．

●Sjögren症候群の間質性肺炎はLIPが特徴的だが，最も多くみられるのはNSIPである．

●SS-A抗体の一部であるRo52抗体は，他の膠原病に伴ってみられた際に間質性肺炎の予後が不良となる可能性がある．

Sjögren症候群—膠原病内科医の視点から大島　美穂 72巻1号 , 2024年2月 , pp.137-145

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POINT

●Sjögren症候群（SS）の3大症状（渇き，倦怠感，疼痛）を含む多彩な症状と合併症について理解する．

●1/3が抗SS-A・SS-B抗体陰性であることに留意する．

●唾液腺エコー，MR sialographyが登場し，非侵襲的な画像検査が充実しつつある．

Ⅱ．各論　［G．IgG4関連疾患・多中心性Castleman病］

IgG4関連疾患・多中心性Castleman病—呼吸器内科医の視点から小松　雅宙 72巻1号 , 2024年2月 , pp.146-154

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POINT

●IgG4関連呼吸器疾患は，胸郭外病変の合併の有無に注目する．

●肺単独のIgG4関連呼吸器疾患については，他疾患との鑑別を行う必要がある．

●特発性多中心性Castleman病の一つの特徴は，画像所見での囊胞性病変の出現である．

IgG4関連疾患・多中心性Castleman病—膠原病内科医の視点から吉藤　元 72巻1号 , 2024年2月 , pp.155-165

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POINT

●IgG4関連疾患の包括診断基準は，臨床症状，血清IgG4濃度，IgG4陽性細胞浸潤の3つの要素から構成され，3項目すべてを満たす場合に確定診断，一部を満たす場合に準確定診断または疑い診断となる．

●特発性多中心性Castleman病の診断基準によれば，リンパ節腫大，特徴的なリンパ節病理所見，および他の疾患の除外の条件を満たす場合に確定診断となる．

●特発性多中心性Castleman病では，血清IgG4値の上昇やIgG4/IgG陽性細胞比の増加を認めることがあり，IgG関連疾患との鑑別が重要である．

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目次 72巻1号 , 2024年2月 , pp.4-5

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バックナンバーのご案内 72巻1号 , 2024年2月 , pp.166

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奥付 72巻1号 , 2024年2月 , pp.168

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呼吸器ジャーナル
72巻1号
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電子版ISSN：2432-3276 印刷版ISSN：2432-3268 医学書院

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序文

Ⅰ．総論

Ⅱ．各論 ［A．関節リウマチ］

Ⅱ．各論 ［B．強皮症］

Ⅱ．各論 ［C．皮膚筋炎・多発筋炎・抗ARS抗体症候群］

Ⅱ．各論 ［D．顕微鏡的多発血管炎］

Ⅱ．各論 ［E．全身性エリテマトーデス（SLE）・混合性結合組織病（MCTD）］

Ⅱ．各論 ［F．Sjögren症候群］

Ⅱ．各論 ［G．IgG4関連疾患・多中心性Castleman病］

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Ⅱ．各論　［B．強皮症］

Ⅱ．各論　［C．皮膚筋炎・多発筋炎・抗ARS抗体症候群］

Ⅱ．各論　［D．顕微鏡的多発血管炎］

Ⅱ．各論　［E．全身性エリテマトーデス（SLE）・混合性結合組織病（MCTD）］

Ⅱ．各論　［F．Sjögren症候群］

Ⅱ．各論　［G．IgG4関連疾患・多中心性Castleman病］

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