BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 71巻8号 (2019年8月)

特集 パーキンソン病診療の現在地—200年の変遷と新規治療

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特集の意図

ジェームズ・パーキンソンが「振戦麻痺」を提唱してから今年で202年を迎える。本特集では,この変遷をひもときパーキンソン病の理解を深めたのち,現在考えられている病態や治療法を整理し,未来へとつながる最新の研究内容を紹介する。パーキンソン病の診療に携わる医療者にご一読いただき,パーキンソン病診療の現在地を確かめてもらいたい。

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神田 ジェームズ・パーキンソン(James Parkinson;1755-1824)の原著1)から202年,シャルコー(Jean-Martin Charcot;1825-1893)2)がパーキンソン病(Parkinson's disease:PD)という疾患名を提唱してから130年余りが経過しました。神経変性疾患の中では有効な治療手段のある,唯一に近い疾患であることは間違いありません。しかし,いまなお診断・治療を含むさまざまな局面で多くの問題点を抱えている疾患であると,私は思います。

 本日は,水野美邦先生と武田 篤先生という,日本を代表するPDの大家であるお二方をお迎えしました。PDにまつわるさまざまな問題点を,過去,現在,未来という切り口でお話しいただきたいと思います。

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シャルコーが「振戦麻痺」を「パーキンソン病」へと改称する際に提示し,「パーキンソン病」の象徴となった症例“バシェール”について,「現代の眼」から再検討した。また,『Nouvelle Iconographie de la Salpêtrière』に掲載されている,「伸展型パーキンソン病」についての論文2編(1889年,1892年)についても検討を行い,その2編に記載された合計4症例,特に症例“レオン”について考察した。伸展型パーキンソン病は,当時はパーキンソン病の一病型として認識されていたが,今ではほとんど聞くことがなく,現在のパーキンソン病とは異なる病態である可能性を指摘した。

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ここ10年にわたっていくつかの遅延開始研究が実施され,早期のドパミン補充療法導入がパーキンソン病の予後を改善する可能性が示唆されてきた。またL-ドパ毒性がほぼ否定的となったこともあり,『パーキンソン病診療ガイドライン2018』では原則としてL-ドパで治療を開始することが推奨されている。さらに最近,パーキンソン病に対する疾患修飾療法の臨床研究が目覚ましい勢いで進んでいる。運動が疾患予後を改善する可能性も注目される。

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パーキンソン病(PD)は,遂行機能障害,注意障害,視空間認知障害,記憶障害,社会的認知障害などの認知機能障害をきたすことが明らかになっている。これらの認知機能障害はPD患者の予後やQOLに大きな影響を与えるため,その診断,危険因子,病理学的背景,発症機序,治療法についての研究が行われ,知見が年々増している。今後,PD診療では認知機能障害も運動症状とともに治療が展開することを念頭に置き,PDの認知機能障害を概説する。

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パーキンソン病(PD)は,中脳黒質などにおけるドーパミン作動性ニューロンの選択的変性によって特徴付けられる代表的な神経変性疾患である。PDの進行を遅らせる根本的治療法はいまだ開発されておらず,有用な疾患修飾療法の開発にはヒューマンバイオロジーに基づいた疾患モデル構築が重要である。ヒトiPS細胞関連技術の進歩は,疾患の病因を理解し,新薬を発見し,新たな治療法開発のための手掛かりを得ることができる。

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脳深部刺激療法(DBS)は進行期パーキンソン病における重要な治療方法として確立しており,2018年に発刊された『パーキンソン病診療ガイドライン2018』において,薬物治療抵抗性の運動合併症に対する治療のオプションの1つとされている。米国食品医薬品局では運動合併症発現早期からの導入も認可されており,今後は薬物治療と並行してその適応を常に考慮してゆかなければならない。

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Muse(Multilineage-differentiating stress enduring)細胞は生体内に存在する造腫瘍性を持たない多能性修復幹細胞である。骨髄から末梢血に定常的に動員されて各臓器の結合組織に分配され,組織恒常性に関わっていると考えられている。傷害臓器から出されるスフィンゴシン-1-リン酸を感知することで流血中に存在するMuse細胞は傷害部位に集積し,同時多発的に組織を構成する複数の細胞種に分化することで傷害組織を修復する。外来性のMuse細胞を血液中に投与することで有効な組織修復が可能である。Muse細胞は遺伝子導入による多能性獲得や投与前の分化誘導を必要としない。また胎盤の持つ免疫抑制効果に類似する機能を有するため,ドナー細胞の投与においてヒト白血球抗原適合や長期間にわたる免疫抑制剤投与を必要としない。現在,国の承認を受けてドナーMuse細胞の点滴による脳梗塞患者への治験が開始されている。Muse細胞の今後の展望に関して考察する。

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てんかん重積状態あるいはてんかん発作頻発状態の患者26名に,ロラゼパム(LZP)を静脈内投与した。初回投与終了後10分以内に発作が消失し,投与終了後30分以内に再発しない患者は48.0%(12/25名)であったが,初回投与後10〜30分までの2回目の追加投与を含めた全投与後の有効率は64.0%(16/25名)であった。LZPと関連のある重篤または重度の有害事象はなく,有害事象による投与中止もなかった。

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Ⅰ.症例提示

〈症例〉 78歳男性

 現病歴 X年12月某日起床時より耳痛などのない,左顔面の動かしづらさを自覚した。自宅で様子を見ていたが,症状の改善がないため第3病日に当院当科を受診した。

連載 臨床で役立つ末梢神経病理の読み方・考え方・5

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はじめに

 不溶性蛋白であるアミロイドがさまざまな臓器に沈着して臓器障害をきたす疾患群をアミロイドーシスと言う。アミロイドーシスはアミロイドを構成する前駆蛋白によって分類されている。末梢神経障害をきたすアミロイドーシスは遺伝性ATTRアミロイドーシス[旧称:家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy:FAP)]と免疫グロブリン性アミロイドーシス(旧称:ALアミロイドーシス)の2疾患が代表的である。両疾患とも両下肢に痛みを伴うジンジン感やピリピリ感を主徴とすることが多い。腓腹神経生検病理では,沈着したアミロイドがコンゴー赤染色で橙赤色に染まり,電子顕微鏡で8〜15nmのアミロイド細線維の錯綜構造が観察される。神経線維は無髄神経線維の脱落が著明で,有髄線維は小径線維優位に脱落し,神経線維の再生所見が極めて乏しいことが特徴である1)

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 フィラデルフィアで開催された第71回米国神経学会年次総会(The 71st American Academy of Neurology Annual Meeting:2019 AAN Annual Meeting)に参加しました。本学会の特徴,近年行われた変革,そして学会参加の楽しみについて記載したいと思います。

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 美しい。まず心を惹かれるのは,圧倒的な美しさである。もしかしたら,美しすぎるかもしれない。少なくとも,実際のヒトの身体に本書のように鮮やかな彩りはない。昔の教科書のごとくモノクロの濃淡で示すほうが,ヒトの姿に近いのかもしれない。それでも,今,この美しさは必要だと思う。

 アトラスを手に取る読者のほとんどは,医療者の卵である。ヒトの身体を知るための長い道のりを歩み,その向こうにある診断や治療の学びをめざす。かつて自分が解剖学を学んだ頃は,文字情報と少しの図を頼りに,友人たちと相談しながら実習に取り組んでいた。今も,それを理想の学び方だとする意見もある。しかし,進む方向がわからず,解剖学の入り口で力が尽きてしまう学生も多く見てきた。本書は,ページをめくるたびに,さまざまな方向・深度から見た美しい構造物が現れる。もし,何もわからずに出発しても,ページの進みに合わせ,知らず知らずのうちに身体を巡る歩みへ誘われる。

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 認知行動療法はうつ病や不安障害をはじめとした精神障害の治療として優れていることが国内外で証明されてきており,欧米では精神障害の治療において認知行動療法は第一選択の治療の1つと位置付けられている。わが国でもうつ病において診療報酬請求が認められるなど,精神科医や看護師,臨床心理士が身につけておくべき,または提供可能な重要な治療法として位置付けられるようになってきた。

 本書は,米国精神医学会が研修医の教育で必須としている認知行動療法の教科書として企画されたものであり,認知行動療法を学びたいと考えている初心者だけでなく,既に経験を積んだ専門家にも役に立つ貴重で実践的な知識や技法が紹介されている。初版から10年ほどで改訂された第2版は,完成された内容を持つ初版に,認知行動療法をめぐる最近の動向や時代の要請を反映して加筆修正がなされており,例えば自殺リスク軽減を扱った章などはそれに相当するものであろう。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

次号予告

あとがき 髙尾 昌樹
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 本年度から,本誌の編集委員に加えていただくことになりました。歴史と伝統ある本誌の編集委員をさせていただくことは,たいへん名誉であるとともに,あらためて身の引き締まる思いです。私が,研修医になったころ,本誌は『脳と神経』と『神経研究の進歩』というそれぞれ別の雑誌でありました。どちらも内容はハイレベルでしたが,たいへん面白い論文が多く,けっこう背伸びをして読んでいたことを覚えています。かなり古い号も,古書店で購入したものもあり,いまでも読むことがあります。本誌の毎月の特集は,基礎医学から臨床と言えば,ありきたりの気もしますが,通常の雑誌にはない切り口とトピックスで,それぞれの分野の一線で活躍されている方々が執筆されています。また,個々の論文には,著者の思想,思いが明瞭に示されています。毎月の特集は,個々の読者にとっては,関係のある分野,ない分野とさまざまでしょう。しかし,ひととおり目を通しておくと,読んでよかったと思う論文ばかりです。神経科学に関わる研究者から臨床医まで,そして若手からベテランまで,幅広い方々がお読みくださることを願っております。

基本情報

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BRAIN and NERVE-神経研究の進歩
71巻8号 (2019年8月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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