書評
「プロメテウス解剖学 コア アトラス 第3版」—坂井建雄【監訳】 市村浩一郎,澤井 直【訳】
徳田 信子
1
1獨協医科大学医学部解剖学マクロ
pp.893
発行日 2019年8月1日
Published Date 2019/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201370
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
美しい。まず心を惹かれるのは,圧倒的な美しさである。もしかしたら,美しすぎるかもしれない。少なくとも,実際のヒトの身体に本書のように鮮やかな彩りはない。昔の教科書のごとくモノクロの濃淡で示すほうが,ヒトの姿に近いのかもしれない。それでも,今,この美しさは必要だと思う。
アトラスを手に取る読者のほとんどは,医療者の卵である。ヒトの身体を知るための長い道のりを歩み,その向こうにある診断や治療の学びをめざす。かつて自分が解剖学を学んだ頃は,文字情報と少しの図を頼りに,友人たちと相談しながら実習に取り組んでいた。今も,それを理想の学び方だとする意見もある。しかし,進む方向がわからず,解剖学の入り口で力が尽きてしまう学生も多く見てきた。本書は,ページをめくるたびに,さまざまな方向・深度から見た美しい構造物が現れる。もし,何もわからずに出発しても,ページの進みに合わせ,知らず知らずのうちに身体を巡る歩みへ誘われる。
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.