保健師ジャーナル 69巻1号 (2013年1月発行)

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特集　プロとして成長するための振り返り

扉 69巻1号 , 2013年1月 , pp.7

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対象者に関わるとき，当たり前のように，「対象者の考えを尊重して，希望に沿って，関わるのが保健師」そんな前提で活動していないだろうか。自分のもっている無意識の前提を疑ってみるとき，保健師は，もう一段「プロとして」成長するに違いない。日常の保健活動のなかで，「わたし」をふり返ってみよう。

「振り返り」と「前提」への気づき―プロとして成長するために宮﨑　紀枝 , 三井　洋子 69巻1号 , 2013年1月 , pp.8-15

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わたしたちが無意識のうちにもっている前提は，よくも悪くも保健活動に影響するが，わたしたちはそれになかなか気がつかず，知らず知らずのうちに対象者を傷つけることもある。保健師としての「わたし」を振り返り，「前提」に気づくためのヒントを探ってみよう。

JNAモデル事業での気づきと保健師への影響北岡　公美 69巻1号 , 2013年1月 , pp.16-21

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自分自身の保健活動をあらためて振り返ると，無意識に身についていた保健指導の習慣に気づくことができる。モデル事業参加を機に意図的に振り返りを行うことで，スキルアップを図った取り組みを紹介する。

ナラティヴを活用した自己の振り返り―保健師としての「わたし」を知る宮島　綾 69巻1号 , 2013年1月 , pp.22-26

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長野県上小地域では，地域で働く保健師らが集まって全体研修などの活動を行っている。「話し合いそのものが気持ちの整理になっている」との気づきから，ナラティヴという切り口で考えた自分自身の振り返りについて紹介する。

人との交流で見えてきた保健師としての自分後藤　佳苗 69巻1号 , 2013年1月 , pp.27-31

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保健師として「普通」だと思っていることが，実は対象者にとっては「普通」でないこともある。自身を振り返るトレーニングを紹介しながら，保健師としての原点に立ち返るヒントを探る。

特別記事

【対談】駐在保健婦の歴史に学ぶ―『駐在保健婦の時代1942-1997』をめぐって久常　節子 , 木村　哲也 69巻1号 , 2013年1月 , pp.44-50

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戦中から戦後にかけて，高知県を中心にとられた保健婦駐在制。その仕事の中心はひたすら目の前の問題を汲み上げ，それを解決するための施策や支援につなげていくという地域活動であった。このたび出版された『駐在保健婦の時代1942－1997』は，その担い手としての駐在保健婦を，聞き書きをもとに記述したものである。著者の木村哲也氏と，高知県出身で，厚生省（当時）において地域保健法の施行と駐在制の廃止を目の当たりにしてきた久常節子氏との対談をとおして，駐在保健婦から保健活動を学ぶ可能性を探ってみよう。

TOPICS

九州北部豪雨災害における保健活動田中　忍 , 坂田　郁子 , 藤木　弥生 , 井手　喜久子 , 木村　みどり , 古賀　且子 , 岡島　祐子 , 熊本　サチ子 69巻1号 , 2013年1月 , pp.52-59

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はじめに

　2012（平成24）年7月の九州北部豪雨は，当事務所管内に大きな被害をもたらした。被災後3か月を迎えようとしているが，地域によっては，いまだに大きな爪痕を残し，住民のこころのケアが課題となってきている。これまでの保健活動を振り返り，災害時の支援活動のあり方について検討を加えたので報告する。

―感染症対策の基本と応用が身につく―『アウトブレイクの危機管理』第2版が完成尾﨑　米厚 69巻1号 , 2013年1月 , pp.69

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　全国の感染症や健康危機管理担当の保健師に，ぜひ，手に入れて読んでほしい本が完成した。もちろんこれらの担当に限らず，実地疫学や健康危機時のマスコミ対応など関連領域に関心のある人にも，さらには，保健師に限らず公衆衛生関係者にも，幅広く読んでいただきたい。著者を代表して，改訂のポイントを紹介する。

　本書の第1版が出たのは，2000年である。その前の1995～1996年頃は，わが国の健康危機管理のターニングポイントであった。阪神・淡路大震災，堺市のO157食中毒の集団発生などの大きな出来事が続き，危機管理対策への関心は大きく高まった。

調査報告

地域における初妊婦の育児中の母親との交流における体験渡邉　奈津子 , 田口(袴田)　理恵 , 真子　春莱 , 糸井　和佳 , 河原　智江 , 臺　有桂 , 今松　友紀 , 田高　悦子 69巻1号 , 2013年1月 , pp.60-66

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■要旨

　本研究では，地域における育児中の母親と赤ちゃんとの交流が，初妊婦にとってどのように体験されるのかを明確にし，育児不安の軽減に向けた妊娠期からの継続支援への示唆を得ることを目的とした。対象は，育児中の母親と赤ちゃんとの交流事業に参加した初妊婦であり，フォーカスグループインタビューを実施し，交流における初妊婦の体験について質的帰納的に分析した。

　結果，初妊婦は実際に赤ちゃんを抱き，母親と話すことをとおして【母親になる実感の高まり】を感じるとともに，より具体的な【出産・育児のイメージ化】を得ていた。また，地域における交流の特徴として，【母親同士のつながりへの認識の高まり】がみられたことに加え，【地元でのつながりへの興味の芽生え】もみられた。

　以上のことから，妊娠中に地域で育児中の母親と交流することは，妊娠期からの継続した産後早期に向けた育児支援の一助になることが示唆された。

PHOTO／PICK UP

国際保健師ネットワークの意義と今後の課題／保健師の国際的ネットワーク設立に向けて―日本看護協会主催「国際保健師ネットワークプレカンファレンス」開催／国際保健師ネットワークPre Conference東日本大震災被災地視察報告村中　峯子 , 服部　めぐみ , 南平　直宏 , 中板　育美 69巻1号 , 2013年1月 , pp.1-3,34-42

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はじめに

　公益社団法人日本看護協会（会員数約66万人。以下，本会）は，国際看護師協会（International Council of Nurses：以下，ICN）^*1内に，新たに国際的な保健師のネットワークを設立することをめざして，2012年8月27日(月)～29日(水)の3日間，東京都と宮城県で国際保健師ネットワークプレカンファレンスを開催した。

　諸外国にも，わが国の保健師と同様の資格を有する国はあるが，その制度や役割，教育体制は異なっている。現状では，保健師に関する国際的なネットワークは構築されていないため，本会では，各国間での情報共有などを図り，役割や教育体制の明確化，将来的には国際的な保健師倫理綱領の策定なども視野に積極的に活動してきた。

　これまでの取り組みの軌跡と開催時の様子などから，なぜ今「保健師の国際ネットワーク」なのか，その意義と可能性，今後の取り組みについて紹介したい。なお，公衆衛生看護に従事する看護職の名称はさまざまであることから，以下，本稿では便宜上，「保健師」と称する。

日本看護協会は，2012年8月27～29日の3日間にわたり，東京と宮城で「国際保健師ネットワークプレカンファレンス」を開催した。このカンファレンスは，日本だけでなく国際的な保健師のネットワークを新たに設立することをめざす活動の一環である。会期中は，東京，宮城でのシンポジウムやフォーラムなどのほか，東日本大震災の被災地である宮城県内の保健師活動の視察も行われた。

連載　「育児幸福感」を高める　母親支援の新しい形・10

母親の育児幸福感への社会・文化の影響―中国における母親との違いから清水　嘉子 69巻1号 , 2013年1月 , pp.70-75

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　国際化の時代にあっては，日本人の母親の支援のみならず，わが国に在住するさまざまな国の母親に目を向けていくことは重要な課題と考えます。とくに，日本に在住している人数が多く，増える傾向にある，ブラジル，中国，韓国出身の母親については検討が必要です。

　そこで本号では，母親の育児幸福感が社会や文化によってどのような違いがあるのかについて，「中国都市部に在住する中国人の母親の育児幸福感と結婚の“現実”」¹⁾から研究を紹介します。地理的に近い中国の母親を日本の母親と比較してみることは，日本に在住する外国人の母親を理解する一歩となるでしょう。この研究では中国に住む母親を理解するための課題を検討していますが，中国在留邦人や在日中国人の母親に対する援助への示唆にも通じると考えます。

連載　『保健婦雑誌』に見る戦後史・10

「迷信」「新興宗教」と向き合う木村　哲也 69巻1号 , 2013年1月 , pp.76-77

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■迷信・新興宗教との闘いの時代

　『保健婦雑誌』のバックナンバーをたどってみると，1950年代，迷信や，いわゆる新興宗教がたびたび問題となっていることがわかる。それらが妨げとなり，患者の治療が遅れる事例が数多く報告されている。

　記事を一覧表にまとめてみた（表）。目を通してみると，保健婦にとって，1950年代は，迷信や新興宗教との闘いの時代だったと言ってみたくなる。地域に入り込んで活動すればするほど，当時の保健婦は，こうしたケースに向き合う機会が多かったのではないだろうか。

連載　町で暮らし人と出会う・25

漱石・鷗外の衛生状態森　まゆみ 69巻1号 , 2013年1月 , pp.78-79

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　秋に『千駄木の漱石』（筑摩書房）という本を上梓した。『谷中スケッチブック』『不思議の町根津』に続く「谷根千3部作」の最後。2012年は森鷗外生誕150周年の年にあたり，私の住む文京区でも，森鷗外記念館が開館し，いろいろイベントでかまびすしいが，あえて漱石を出した。また，15年前に上梓し，長らく新潮文庫で在庫が切れていた『鷗外の坂』が中公文庫で再刊され，両方の文豪の家庭生活をおさらいした格好になった。

連載　ニュースウォーク・178

終末期医療の“今日性”―“終の信託”の重さ問われ白井　正夫 69巻1号 , 2013年1月 , pp.80-81

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　昨年秋評判になった映画「終の信託」（東宝）を見て，共感するものがあった。10年前に実際に起きた終末期医療事件をモチーフにした朔立木の同名小説（光文社文庫）を原作に，周防正行監督が大胆に脚色したラブストーリーの話題作である。

　1997年の病院。女医（草刈民代）は同僚との不倫で負った痛手を，重度ぜんそくで入退院を繰り返す患者（役所広司）の優しさに癒される。2人は深い絆で結ばれるが，やがて死期を悟った患者は「そのときがきたら，早く楽にして」と女医に頼む。

連載　研究室からのメッセージ・96

名寄市立大学保健福祉学部看護学科地域看護分野播本　雅津子 , 鉢呂　美幸 , 水野　芳子 69巻1号 , 2013年1月 , pp.87

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■History and Now

どのような機関なのでしょう？

　本学は日本最北の公立大学であり，日本最北の保健師養成施設です。1960年に開学した市立名寄女子短期大学から50年以上の歴史があります。本学はこれまで，道北地域における人々の生活を豊かにするための文化や情報の発信基地としての役割を果たしてきました。小規模校の特徴を活かし，信頼関係にもとづく家庭的で自由な学風が確立されています。名寄市は人口約3万人の小さな自治体ですが，長年北海道および全国各地から学生を受け入れてきたため，学生たちは在学中名寄市民として生活し，卒業時には名寄が第2の故郷と思えるようになります。

BOOKS

―『駐在保健婦の時代1942-1997』―輝かしい歴史に学び，これからを展望しよう！田上　豊資 69巻1号 , 2013年1月 , pp.43

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　本書は，元駐在保健婦を祖母にもつ著者が，多数の元保健婦らの経験を聞き書きしながら，高知県を中心に1942（昭和17）年から1997（平成9）年までの保健婦駐在制を，歴史学の手法を用いて紹介したものである。

　第1章は，「健民健兵政策」という戦時色を色濃く反映した1942年の駐在保健婦の配置の紹介から始まっている。第2章では，高知県衛生部長（医師）の聖成稔氏と，若くして抜擢された保健婦の上村聖恵氏の2人が，「県民に等しく健康権を保障する」という強い信念のもと，GHQによる指導を契機として高知県独自の保健婦駐在制を構築していった経緯を紹介している。その背景には，高知県の衛生水準の低さと劣悪な地理的条件・交通事情があった。第7章では，昭和26年の厚生省による「高知方式」をモデルにした全国への普及政策を紹介し，その背景にあった高度経済成長の進行に伴う過疎地域の医師不足問題を指摘している。また，「憲法25条に定める公衆衛生の普遍性から出発しながら，医療の不在を補完する役割を駐在保健婦が担うかたちに変質・定着していった」と指摘し，「孤島の太陽」に象徴される保健婦美談とともに，川上武氏などによる駐在制批判も紹介している。また，第5章では沖縄県の駐在制，第6章では青森県の派遣制を紹介し，高知との比較をしている。

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バックナンバー一覧 69巻1号 , 2013年1月 , pp.32

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投稿規定 69巻1号 , 2013年1月 , pp.67

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NEWS DIGEST 69巻1号 , 2013年1月 , pp.82-83

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保健・医療・福祉のこのひとつきの動き

喫煙で寿命10年縮まる

日英，日本人を60年以上調査

　たばこを吸うと寿命が8～10年縮まることが，放射線影響研究所（広島市）や英オックスフォード大による調査でわかった。日本人約6万8000人を分析した結果，未成年でたばこを吸い始め，吸う本数が多い人ほど死亡リスクは高かった。25日付の英医学誌電子版に発表した。

　研究チームは，広島・長崎の被爆者の健康影響を調べるために放影研が60年以上続けている「寿命調査」の対象者のうち，喫煙の有無が判明している人を分析した。被爆していない人も含まれる。

INFORMATION　学会・研究会・講演会などのお知らせ 69巻1号 , 2013年1月 , pp.84-85

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今月の3冊プラス1 69巻1号 , 2013年1月 , pp.86

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次号予告・編集後記 69巻1号 , 2013年1月 , pp.88

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基本情報

保健師ジャーナル
69巻1号
(2013年1月発行)

電子版ISSN：1882-1413 印刷版ISSN：1348-8333 医学書院

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