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―『駐在保健婦の時代1942-1997』―輝かしい歴史に学び,これからを展望しよう!
田上 豊資
1
1高知県中央東福祉保健所
pp.43
発行日 2013年1月10日
Published Date 2013/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664102061
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本書は,元駐在保健婦を祖母にもつ著者が,多数の元保健婦らの経験を聞き書きしながら,高知県を中心に1942(昭和17)年から1997(平成9)年までの保健婦駐在制を,歴史学の手法を用いて紹介したものである。
第1章は,「健民健兵政策」という戦時色を色濃く反映した1942年の駐在保健婦の配置の紹介から始まっている。第2章では,高知県衛生部長(医師)の聖成稔氏と,若くして抜擢された保健婦の上村聖恵氏の2人が,「県民に等しく健康権を保障する」という強い信念のもと,GHQによる指導を契機として高知県独自の保健婦駐在制を構築していった経緯を紹介している。その背景には,高知県の衛生水準の低さと劣悪な地理的条件・交通事情があった。第7章では,昭和26年の厚生省による「高知方式」をモデルにした全国への普及政策を紹介し,その背景にあった高度経済成長の進行に伴う過疎地域の医師不足問題を指摘している。また,「憲法25条に定める公衆衛生の普遍性から出発しながら,医療の不在を補完する役割を駐在保健婦が担うかたちに変質・定着していった」と指摘し,「孤島の太陽」に象徴される保健婦美談とともに,川上武氏などによる駐在制批判も紹介している。また,第5章では沖縄県の駐在制,第6章では青森県の派遣制を紹介し,高知との比較をしている。
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