連載 ゲイ男性の抱える苦悩・1【新連載】
性的指向と異性愛者的役割葛藤
日高 庸晴
1
1京都大学大学院医学研究科
pp.580-583
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100395
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性的指向
男性が好きか,女性が好きか。多くの人の性的指向は自分とは異なる性を好きになる異性愛であるが,同性を性愛の対象とする同性愛,あるいは両性を対象とする両性愛という性的指向をもつ人も,少数ではあるが存在する。同性愛者や両性愛者は,人口の3~5%前後存在すると言われており,50人に1人か2人は非異性愛者であることになる。また,この性的指向は自ら選択できるものではなく,多くの異性愛者が「思春期の頃に気づいたら異性に関心をもっていた」ということと同様に,ゲイ(同性愛)・バイセクシュアル(両性愛)男性の多くも「気づいたときには同性に関心をもっていた」と答えている。
米国・英国をはじめとする欧米諸国では,ゲイ・バイセクシュアル男性の健康問題に関する調査研究が,1970年代頃からさかんに実施されてきている(表1)。一連の先行研究によると,ゲイ・バイセクシュアル男性がかかえもつ健康問題の多くには,社会的な少数者としてのストレスや精神的健康の悪さが関連していることが実証的に示されている。ここでいうストレスとは,単に少数者ということに起因するものだけではなく,社会からのスティグマや同性愛嫌悪などが大きく影響を与えているといわれている。
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