糖尿病診療マスター 13巻4号 (2015年4月)

特集 糖尿病医療学の時代—糖尿病患者のこころを支える

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糖尿病と他の慢性疾患〜医学への挑戦

 慢性の病いを生きる者にとって,「機能」は考慮すべき重要な事項である.慢性の病いと関係して起こる痛みや息切れ,虚弱性,易疲性.これらすべての実に些細な症状の変化が,日常生活のなかでの活動や家族とともに過ごすことができるか否かに影響を与えることになる.慢性の病いを抱えて生きる時に,このような些細なことがとてつもなく重要な違いにつながることを医療者が知っておくことは重要である.

 この変化を,新しいスタイルの患者-医師の関係性のなかで管理していくことが大切である.ここでいう関係性とは,医師が助言者となって,患者を中心に,患者の責任性を強調して,より広範にわたるセルフケアを巡って,患者・家族とともに協働していく関係のあり方を意味している.

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POINT

・糖尿病医療を患者との相互交流の視点から考える.

・相互交流においては「関係」というパラダイムが重要となる.

・糖尿病者のこころを支えるために,糖尿病医療学が必要となる.

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POINT

・血糖管理の改善を望むことと能動的治療.

・適切な指導と「成功体験」が必要である.

・能動的治療,「考えることの大切さ」.

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POINT

・EBMに基づく「知」と患者の心に寄り添う「情」の両面に配慮する.

・「患者とともに糖尿病を生きる」という心構えをもつ.

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POINT

・糖尿病臨床の場では,科学としての糖尿病学では扱えない問題がある.それらは,患者の心理的問題や社会的問題が関わっている.

・これらの問題に対処していくためには,従来の医学的アプローチとは異なる方法が必要となる.すなわち,病気としての糖尿病だけではなく,糖尿病をもつ人に関わっていくことが必要である.

・心と行動の問題に関しては,いろいろな理論や方法論がある.それらを学ぶことには意味がある.しかし,方法に使われない(方法を主体にさせない)ことが重要であり,目の前の患者さんに合わせて,その展開につきあう時間と関係が求められる.

・この領域を糖尿病医療学と呼ぶ.そのベースは患者-医療者の人間関係である.信頼関係を基礎として,その人の人生を視野に入れ,患者の価値観を尊重し,より広い視点に立ったアウトカムを患者とともに考える.

糖尿病医療学の実践

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POINT

・病識のない患者ほど多くの情報提供を.

・合併症は無症状からいきなり発症する.

・患者は糖尿病人生の一断面しか知らない.

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POINT

・糖尿病医療学とは?

・糖尿病医療学的に事例を検討することとは? またその効果とは?

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POINT

・“感情”こそ,行動の原動力である.“目的”とそれに対する“感情”が行動を変えていく.その“感情”を呼び起こすのが糖尿病療養指導である.

・「楽しさ」や「絆」,「体験」,「気づき」は“感情”を呼び起こして人の行動を変えることができる.

・糖尿病療養チームの「思い」も患者の行動を変えることができる.患者のこころをチームで理解し支えることが,患者が新たな行動へと一歩を踏み出すための大きな力となる.

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POINT

・臨床心理士が医療者とともに患者に関わることは,お互いにとって大きな支えとなり,また糖尿病を抱えて生きる人との関係の在り方をより深く学ぶことができる.

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 『病を引き受けられない人々のケア—聴く力,続ける力,待つ力』が医学書院から出版された.これは本誌で2004年から始まったMaster Interviewを修正加筆したものである.私がインタビューさせていただいたお話は,一言で表すと糖尿病を巡る「科学と人間」ということになると思われるが,そのなかから,主題が(科学より)人間にある対談をまとめたものである.

 登場される方々は,河合隼雄,養老孟司,北山 修,中井久雄,中村桂子,門脇 孝,鷲田清一,西村周三,皆藤 章の諸先生である.これらの先生と対談を始めた頃,私には糖尿病に関する大きなテーマがあった.それは私たちが知っている(と思っている)科学としての理解以上(以外)の糖尿病理解はどんなものかということである.わかりやすく言えば,この先生方が著された書物を読んで,述べておられる考え方を糖尿病に当てはめればどういうことになるだろう,と思ったのである.

糖尿病運動療法“ヒヤリ・ハット”・1【新連載】

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 運動療法の現場では,さまざまな事故がおこる可能性があります.具体的には転倒や外傷などが多いのですが,糖尿病患者の場合は合併症・心血管系疾患・血糖値の問題などから,運動時にさまざまなリスクを惹き起こすおそれがあります.

 近年,医療現場でも深刻な事故には至らないものの,事故につながりかねない一歩手前のエピソードのことを「ヒヤリ・ハット」と称し,その事例を収集・分析して再発を防ぎ,重大事故の防止につなげています.もとは労働安全の分野で生まれた概念であり,その考え方は事故発生に関する法則として「ハインリッヒの法則」が知られています(下図).これは,1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり,さらにその背景には 300件の異常(事故にならなかったものの,ヒヤリとしたりハッとしたりした事例)が存在するというものです.

季節を感じる糖尿病食—旬の野菜と身近な卵で【新連載】

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アスパラのサンドイッチ

■材料(2人分)

サンドイッチパン 8枚

バター 大さじ1

グリーンアスパラガス

(太めのもの) 8本

マヨネーズ 大さじ1

塩 大さじ1

糖尿病患者の足を守る〔Basic 編〕—足をみる・きく・ふれる・4

足を聴く 仲村 直子
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 今回は,少し趣向を変えて,足の血流を評価するための検査についてご紹介します.検査は医師の指示で行われ,検査結果は医師から説明されます.ただ,患者がその結果から自分の足の血流がどうなっているのか,動脈硬化と糖尿病との関連を理解し,フットケアを継続していくことはそんなに簡単ではありません.筆者は超音波血流計を使用して,患者と一緒に血流音を聴き,患者が足を知ることを支援しています.患者の足を守るために,『足を聴く』ことについて考えてみたいと思います.

糖尿病診療トレーニング問題集

内科医レベル 森田 善方
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症例 76歳,男性.

主訴 高血糖.

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 低血糖は血糖降下療法の最大のリスクです.低血糖があると,達成しうる血糖コントロールレベルが限られてしまい,QOLに影響を与え,意識消失,入院加療となってしまいます.疫学調査では,低血糖を起こした者では,心血管イベント,がん,死亡といった広範囲なリスクが上昇すると報告されています.そのため,重症低血糖,非重症低血糖を起こす患者臨床像を把握することが重要となります.心血管リスクをもった耐糖能異常者を,平均6.2年間インスリングラルギンを用いた治療か標準治療をするかというORIGIN(Outcome Reduction with an Initial Glargin Intervention)試験の結果が2012年に発表されました.グラルギン治療群では,心血管イベントや発がんには影響はありませんでした.絶対数は少ないものの,低血糖はグラルギン投与群のほうが標準治療群より多く起こっていました.重症低血糖,非重症低血糖の頻度やどういった患者で低血糖が起こるかといった解析結果が今回発表になりました.

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 2014年8月6〜9日,フロリダ州オーランドで,第41回AADE(米国糖尿病教育者協会)年次集会が開催された.学会テーマは「Refresh. Recharge. Renew」であり,フロリダの輝く太陽のもと,「現状を見直すことで,新たな段階へ」というポジティブなメッセージが掲げられた.

 年次集会会長を務められたジョアン・バードスレー(看護師)は,ハーバード大学附属ジョスリン糖尿病センターでの臨床実践の後に,ジョージワシントン大学で経営学修士号を取得し,医療政策や経営戦略に精通している.また,プログラム委員長には,IDF(国際糖尿病連合)の研究プロジェクト代表であるリンダ・シミネリオ(看護師)が担当され,「糖尿病患者が抱える問題に,現状の糖尿病教育の体制で対応できているか?」との問題提起がなされた.

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 「がんサバイバーシップ」という言葉を日本語として理解するのは難しい.「がんサバイバーシップ」の考え方が生まれたのは,1990年代後半の米国である.私は,ちょうどその頃に,米国のDana Farber Cancer Instituteの関連機関でがんサバイバー(がん体験者)の方にインタビューする機会を得,「がんサバイバーシップ」について,彼の次のような言葉からようやくその意味を理解することができた.「がんになったことは自分にとって大きな衝撃であったが,がんになってからの全ての体験(苦痛や苦悩も含め)が自分にとって意味のある生き方や充実した日々の生活につながることを,医療者のみならず,周りの人々との関わりの中で感じられるようになった.そう思えるようになるには,自分のがんをよくわかること,医療者に遠慮せずに治療やケアについて相談し,社会に自分のがんをわかってもらうことが必要であった」.がんサバイバーシップは,がんの診断を受けてから,がんとともに生き続けていく過程が,その人にとって意味のある生き方や日常の充実した生活につながることをめざすものといえる.

 本書は,「がんサバイバーシップ」の考え方を実際に実践や研究として実行している医療従事者,専門家によって書かれたものである.あるべき論ではなく,著者自身の卓越した実践力,それを支える研究文献や理論に基づく具体的実践が示されているのですぐに実践に活用できると思える.

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お知らせ
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第36回日本肥満学会 開催概要

開催日:2015年10月2日(金)〜3日(土)

テーマ:「知で拓く肥満症学の進歩と未来」

会 長:箕越靖彦(生理学研究所発達生理学研究系生殖・内分泌系発達機構)

会 場:名古屋国際会議場

    (名古屋市熱田区熱田西町1-1)

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本誌連載「作って食べて学ぶ! 糖尿病食」が単行本になりました!

 本誌で今年1〜3月号に連載しました「作って食べて学ぶ! 糖尿病食」が単行本になりました.

 東京多摩地区を中心に活動しているNPO法人西東京臨床糖尿病研究会,50余名の管理栄養士グループによる,糖尿病患者さんを対象とした調理実習のレシピ,日常診療で使っている食事指導の資料をまとめた1冊です.

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糖尿病診療マスター
13巻4号 (2015年4月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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