日本看護医療学会雑誌 20巻2号 (2018年12月)

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要  旨

 本研究の目的は、健常者の受動的筋弛緩法の体験による主観的評価をPOMS短縮版、リラックス感覚より明らかにすることである。

 健常者38名を研究に同意した順に受動的筋弛緩法(PMR)群、能動的筋弛緩法(AMR)群、対照群に振り分け、介入を行った。分析の人数は36名であった。

 POMS短縮版は、PMR群とAMR群において、「緊張─不安」「抑うつ─落ち込み」「怒り─敵意」「疲労」「混乱」の5項目は、介入後は有意に減少していた。リラックス感覚は、PMR群では6項目全て「呼吸が落ち着いている」「手や足の指先が温かい」「腕・足の力が抜けている」「顔・首・肩の力が抜けている」「気分が落ち着いている」「心身ともにリラックスしている」が、AMR群では5項目が、介入後の得点が有意に高くなっていた。筋肉に意識を集中させ弛緩していくのみのPMRは、一時的な気分の改善や主観的なリラックスの感覚の上昇をもたらすことが示唆された。

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要  旨

 目的:産科病院を退院前の初産婦の母乳育児に対する思いと、助けになったと感じた看護者の働きかけ を探索する。

 方法:退院予定にある産褥4〜5日目の初産婦12名に、半構成的面接を行った。

 結果:「思い」の184コードから、嬉しさや母親役割の実感、悲しさや諦め、授乳を義務感と捉えるなど多様であり、これらの思いには、母乳育児の習得状況や身体的苦痛といった現状の影響だけでなく、出産前からの母乳育児への希望やイメージとの違い、退院に向けての思いなどとも関連していた。「助けになった働きかけ」は、176コードから、母親に向けた励ましや承認、安心を与える声掛けや、体調などを配慮した母親自身に向けた支援などがあげられた。知識・技術面では、個々の時期や授乳状況に合わせた指導や、対象に合わせた知識の提供などであった。

 結論:産科病院を退院間近の初産婦の母乳育児への思いは複雑である。それに対しての助けとなる働きかけは、看護者の行動や態度に関するものが多かった。

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Ⅰ.緒  言

 我が国の高齢化率は上昇を続け、それに伴い認知症高齢者も増え続けている。2012年の認知症高齢者数は全国で462万人、2025年には700万人となり、高齢者の5人に1人が認知症になると推測されており(内閣府,2012)、国民の医療や介護の需要が増加することが見込まれている。このような社会背景から、厚生労働省は2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進している(厚生労働省,2017)。したがって、地域で暮らす高齢者を支えていくためには、近隣住民・地域で働く人たちの理解及び支援も重要な社会資源になると考えられる。

 厚生労働省と関係省庁は、地域で暮らす認知症高齢者への支援の1つとして、共同で「認知症施策推進総合戦略 〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)」を策定した。「認知症サポーターキャラバン」は、新オレンジプランに含まれている「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」の一環として実施されており、その中で「認知症サポーター」が育成されている。「認知症サポーター」は、認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り、支援する応援者として、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりを目指している。認知症サポーターは、2015年12月時点で全国に約713万人が誕生しており、厚生労働省が掲げる2017年で600万人の目標を達成している(認知症サポーターキャラバン,2016)。

 認知症サポーターに関する先行研究(金ら,2011)では、認知症サポーター養成講座受講者232名に養成講座の効果について自記式質問紙調査を行い、7割の認知症サポーターが認知症の人の見守りの重要性の認識や認知症に対する情報への関心を挙げていることが示されている。また、受講後に認知症啓発イベントやボランティア活動に参加した人は、高い認知症受容度を保持している傾向が認められ、自分たちにできることを模索したサポーターの発想により、地域の実状に即した見守り、オレンジカフェの開催、傾聴等、認知症の人を支える多彩なボランティア活動が行われている(菅原ら,2016)。一方で、実際には養成講座終了後、7割の人が活動をしていないという報告もある(荒川ら,2012)。

 認知症サポーターとしての活動の志向性には、1回以上の講師経験に加えて、養成講座受講後の活動意欲、活動経験、活動で感じる楽しさが関連することが示されている(若山ら,2010)。また、認知症サポーター養成講座修了者659名に質問紙を用いた研究(荒川ら,2012)では、活動意欲に関連する要因として活動に費やせる時間・内容、首尾一貫感覚(Sense of Coherence;SOC)の有意味感、サポーター養成講座からの学びが関連すると報告されている。さらに、認知症サポーターの認知度と関心度について204名の看護学生を対象に質問紙調査(三浦ら,2013)を行ったところ、認知度が4.4%と低く、若者へ認知症サポーターという存在が浸透していないことが明らかにされている。

 しかし、認知症サポーターの目的である、認知症の人や家族を温かく見守り、支援することを達成するために認知症サポーターが地域で活動を継続していく要因を経時的に明らかにした研究は見当たらない。そこで、本研究では、認知症サポーターの活動への語りから活動継続要因を活動開始・活動維持・活動発展の視点で明らかにすることを目的とする。本研究において、認知症サポーターの活動継続要因を検討することで、認知症サポーターが養成講座での学びを生かし、地域での活動を継続できることで、認知症高齢者が暮らしやすい地域づくりの一助になると考えた。

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要  旨

 目的:排便の状況に則した患者指導の基礎資料とするため、患者自身の自己管理の実施状況と指導希望の関連を明らかにすることを目的とした。

 方法:2013年12月から2014年2月にA大学病院にて外来受診した患者800人を対象に自記式質問紙調査を実施した。

 結果:559名の有効回答から、排便に関わる指導希望は、内服薬の飲み方34.7%、運動の仕方44.2%、食品の取り方51.5%であった。先行報告(山幡ら,2016)で明らかにした排便に関する自己管理4因子と指導希望との関連について、二次解析を行った。自己管理要因と指導希望の関連性について、『薬剤活用』高実施群は低実施群に比べ内服薬の飲み方(OR=1.93,p<0.01)、運動の仕方(OR=1.71,p<0.01)、食品の取り方(OR=1.69,p<0.05)の指導希望を有していた。『食事管理』『運動習慣』の実施状況と指導希望は関連がみられなかった。

 結論:自己管理として薬剤を使用するものは指導を希望していた。生活習慣上の課題を有するものにこそ指導が必要であるが、個人の実施状況は指導希望に関与していなかった。自己管理の実際に則した動機づけとなるような働きかけが必要である。

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Ⅰ.緒  言

 飲酒は人間関係を円滑にし、楽しみやストレスの緩和に有効とされる一方で、健康障害を引き起こすリスクのある薬物でもある。例えばわが国で、生活習慣のリスクを高める量を飲酒する者(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者)の割合は、20歳以上で男性14.6%、女性9.1%にのぼる(厚生労働省,2017)。適正な飲酒を考えていくためにも、先ずは人びとにとっての飲酒の意味に焦点をあてることは重要と考えられる。

 人は、酒を飲むことにどのような効果を期待し(飲酒効果期待)、なぜ酒を飲む(飲酒動機)のだろうか。ここでの「効果期待(以下、『効果』と表現)」とは特定の物質使用に関して行動的、感情的、認知的な効果として個々が抱くポジティブやネガティブについての信念を指し(Quigley et al., 1996)、「動機」とは(特定の物質に対する)望まれた効果や結果を獲得するための実際の効用を指す(Cooper, 1994)。人は、飲酒することを動機づける過程において、「経歴要因(人格特性や、社会文化的影響、生化学的反応や習慣性など)」や、「現在の要因(現在の情動性の質と量や状況など)」の影響を受ける。そして、飲酒による効果期待を判断し(Cox et al., 1988)、飲酒動機が生じる(Cooper et al., 2015)。また、物質使用に関するこの効果と動機には重複があることが知られている(Cooper et al., 2015)。

 この飲酒効果や動機には、飲酒量や飲酒頻度といった飲酒状況や飲酒スタイル等が関連する(Cooper et al., 1995;Leigh et al., 1993)。関連の様相は対象集団によりいくらか異なるが、このような関連要因の検討を行うことは飲酒行為への認知に焦点をあてた対策につながるため重要と考えられる。

 本研究では、飲酒効果・動機とその関連要因についてわが国の調査研究を明らかにし、現状と今後の研究課題を考察していく。国内に限定して調査研究を整理するのは、飲酒のあり様が人の生活と経験の文脈に深く根ざし社会・文化的な影響を受ける(Cooper et al., 2015)ためである。わが国はアルコールへの親和性が高く、飲酒観(飲酒の許容場面など)にも性差がある(清水ら,2004)。また、飲むこと酔うことに許容性の高い文化を持つ国でもある(清水,2002)。そのため、わが国の人びとの飲酒に至る心理について、国内を単位として研究を俯瞰する必要があると考える。これまで、飲酒動機に関する海外での文献レビュー(Cooper et al., 2015)はあるものの、国内研究を整理したものは見あたらない。よって、本研究では、わが国での飲酒効果・動機とその関連要因について文献レビューにより明らかにしていくこととした。

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抄  録

 ミャンマーは軍事政権から民主化へと移行し転換期を迎えている。人、物の往来が増え、今後、疾患構造も大きく変化していくことが大いに予測される。名古屋大学が2013年より実施している博士課程前期・後期一貫の学位プログラムの一つウェルビーイングinアジア実現のための女性リーダー育成プログラムでは、2015年から2017年までに三度ミャンマーを訪問する機会を得た。本稿は、これまで訪問した地域や施設の健康問題についての取組みを報告するとともに、2016年に実施した経済の中心都市であるヤンゴン市外に位置する僧院学院に通う児童への健康調査の結果をまとめた。急速な経済発展の裏で、無料で提供されている公立の小学校に通えない貧困層も未だ多く、訪問した僧院学院に通う児童368名に対し行った健康測定において、WHOによる参照値と比較したところ、身長体重ともに3〜6ポイント下回り、食育や健康教育の重要性を示唆する結果となった。

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要  旨

 【目的】大学病院に就業する看護師長の疲労度・睡眠障害の実態を把握し、疲労度に影響する要因を明らかにする。

 【方法】全国の大学病院を対象とし、そのうち研究協力に同意の得られた24の大学病院に就業する看護師長120名に質問紙調査を実施した。

 【結果】回収数89名(回収率74.2%)のうち、質問票全てに回答があった女性看護師長71名を分析対象とした。対象となった看護師長は、疲労度が要注意域や危険域にある者が30%を超え、66%の者に睡眠障害があり、疲労度と睡眠障害との関連が認められた。また、睡眠障害、看護スタッフへの疲労教育の実施、休憩時間の短縮、疲労による職務継続不安は疲労度に影響していた。

 【考察】今回対象となった看護師長には、疲労度と睡眠障害との関連が認められ、疲労度と睡眠状態の両方を改善する必要性が示唆された。看護スタッフへの疲労教育の実施は疲労度に影響しており、看護師長にとって負担となっていることも推察された。看護スタッフの疲労教育が組織的に行われること、看護師長も疲労・睡眠について学ぶ機会があることは看護師長の疲労軽減・睡眠改善に有効な対策となる可能性が示唆された。

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抄  録

 【目的】本研究は、知的障害者支援施設における知的障害者への看護師による支援の特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】A県内の一障害者支援施設に勤務する看護師3名を対象として、インタビュー調査を行った。【結果】支援の特徴に関して、コード化された30の概念から15のサブカテゴリーが抽出され、さらにそれらを集約、分類した上位概念として、《利用者視点に立った他施設との協働》《円滑な診療のための環境整備》《スタッフの主体的な業務遂行のための指導体制》《利用者の全身状態と言語的・非言語的情報を統合したアセスメントの展開》《生活状況や治療方針に関する親への情報提供と参画》《生活動作獲得促進のための作業過程の工夫》《利用者意思を尊重した関わり》の7つのカテゴリーが生成された。【結論】知的障害者支援施設における看護師の支援内容を質的に分析した結果、支援の特徴として7つのカテゴリーが抽出された。今後の課題として、これらの支援上の特徴を反映した、看護援助上の指針作りを行っていくことが考えられた。

基本情報

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日本看護医療学会雑誌
20巻2号 (2018年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1345-2606 日本看護医療学会

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